日本経済の「極めて異質」な特徴
■GDP「世界第三位」でも経済力や競争力は決して高くない
皆さんご存じのとおり、日本は国全体のGDPでの世界ランキング(IMFより公表)では永らくアメリカに次ぐ第二位であり、2010年頃に中国に抜かれたものの、2020年12月現在でも世界で第三位というポジションを維持しており、依然経済大国であることには間違いありません。実際、相変わらず日本が裕福な国だと考えている日本人もかなり多いと思います。ただ、残念ながら世界からはそのように見られていません(同様に中国が世界で二番目に裕福な国だと思っている方もほとんどいないでしょう)。
GDP(国民総生産)の総額は「生産性×人口」で表され、中国が急激にランキングを上昇させたことでもわかるようにGDPは人口に比例するものです。GDPの世界ランキングの高い国の国民が皆裕福かといえばそうとも限らないわけです。
そこで近年では国の経済的な豊かさを測るための指標として、GDP(国内総生産)を国の人口で割って算出する一人当たりの付加価値額である「一人当たりのGDP」によって国ごとの競争力を比較することが世界では一般的となっています。
この一人当たりGDPで見ると日本はなんとOECDに加盟している36ヵ国中第18位に沈んでしまいます(図表1)。ここから見えてくることは、経済規模の大きさから離れて生産性の観点で比較すると、日本の経済力や競争力は国際的にも決して高くはないということです。
■日本企業の労働生産性は「アメリカ企業の6割」しかない
なお、一人当たりGDPだけでは、日本は専業主婦や高齢者が多いので正確な実態を表わさない、というご意見の方もいらっしゃると思います。そこで日本企業の生産性や競争力の実力をより正確に捉えるために、GDPを労働者(就業者)の数で割って算出する「労働生産性」からも見てみます(図表2)。
そうするとなんと、労働生産性で比較したほうが日本の順位が下がってしまうのです。たとえば日本の労働生産性はアメリカと比較するとその約6割しかありません。つまり日本の企業が生み出す付加価値はアメリカの半分強に過ぎません。言い換えると、日本の企業はアメリカの企業の倍の人数をかけてようやくアメリカと同程度の付加価値を上げることができるということです。
■人材の質は「世界最高」だが、組織としては「世界最低」な日本
ではアメリカの労働生産性が異常に高いのでしょうか?
そうではありません。さほど生産性の高いイメージのないスペインと比べても日本の労働生産性はスペインの約8割しかありません。それどころか日本の労働生産性はトップのアイルランドの半分以下で、かつて日本よりも下だったデンマークやオーストラリアにも抜き去られています。
では労働生産性が上がらないということは働く人の能力がよほど低いのでしょうか?
これも違います。世界から見ても日本人労働者の質はまじめで潜在能力も高いとされています。このことは、図表3の人材の質ランキングで第四位に位置していることからも世界がその能力を認めていることを確認できます。
つまり働く人材のポテンシャルは世界でも最高レベルなのに、組織として集まって「企業」単位になると先進国でも最下位レベルになる、というのが日本経済の極めて異質な特徴なのです。やはり、日本の企業経営のあり方に何か構造的な問題や課題があることは間違いなさそうです。