※写真はイメージです/PIXTA

10年以上前から「企業全体の約7割が赤字」という異常事態が続く日本。全体の99.7%を占める中小企業が低生産性に陥っているために、その企業が赤字に苦しむばかりか、国全体の労働生産性を下げる要因にもなっています。しかし、中小企業が日本経済の足かせとなっている一方で、中小企業の存続・発展に国の将来がかかっていることも忘れてはいけません。中小企業の課題は、国全体の課題。それを痛感させられる危機的状況として、今回は「大廃業時代」について見ていきましょう。税理士の三反田純一郎氏が解説します。

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大廃業時代、目前…「約127万社が廃業予備軍」の恐怖

■「約650万人の雇用喪失、GDP約22兆円損失」の危機

2017年に経済産業省が発表した衝撃的なデータが日本中の経営者やアドバイザーを震撼させました。なんと2025年までに6割以上の経営者が引退年齢とされる70歳を超え、その企業のうち半分の127万社で後継者不足となり、このまま放置すると「大廃業時代」を迎え、約650万人の雇用と約22兆円にのぼるGDPが失われるおそれがあるというのです(図表1、2)。

 

(出所)「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」中小企業庁
[図表1]2025年大廃業問題の概要① (出所)「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」中小企業庁

 

(出所)「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」中小企業庁
[図表2]2025年大廃業問題の概要② (出所)「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」中小企業庁

 

このニュースには私もそれまでの仕事観が変わるほどのショックを受けたことを今でも覚えていますし、数年経った現在もこのまま何もせずに「大廃業時代」だけは迎えたくない、という危機感がクライアントへのアドバイスにおいて大きな影響を与えています。

 

国の発表も唐突になされた感がぬぐえませんが、経営者の引退年齢が起点となっている問題である限り、いま何も手を打たなければ国の試算どおりに進むしかないのです。国がこのような悪いニュースを国民に発表することは珍しいので、いよいよ国としてもメスを入れないととんでもないことになると考えてのことだと思います。

 

■全企業の7割が赤字という中、廃業予備軍は「6割以上が黒字」

ところで、この問題の本質は127万社という、とてつもない数の企業で後継者不在、つまり継ぎたい後継者候補が見当たらないということです。このようなことになってしまったのは、なぜなのでしょうか?

 

通常、廃業といえば、毎年赤字が続いてやむにやまれず事業の継続を断念せざるを得ない、というイメージがあります。廃業見込みの企業が赤字企業ばかりなのであれば、誰も継ぐ人がいないということは至極当然に思えます。実際のところはどうなのでしょうか?

 

なんと、廃業を迎えようとしている企業の6割以上は、黒字のまま廃業を迎えようとしています(図表3)。廃業する企業の赤字率は、国全体の赤字企業比率よりも大幅に低いのです。

 

(出所)「2019年版『休廃業・解散企業』動向調査」株式会社東京商工リサーチ
[図表3]廃業する企業の大半は黒字 (出所)「2019年版『休廃業・解散企業』動向調査」株式会社東京商工リサーチ
次ページ「後継者不足」の裏にある根深い問題

※本連載は、三反田純一郎氏の著書『会社の資産形成 成功の法則』(中央経済社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

会社の資産形成 成功の法則―「見えない」資産を築く最強の戦略

会社の資産形成 成功の法則―「見えない」資産を築く最強の戦略

三反田 純一郎

中央経済社

どのような資産を、どのような理由で、どれくらい所有するか? 資産形成の優劣が会社の生死を決める。 保険は投資対象から外す、少額でも投資信託の積立投資は行う、銀行の経営者保証の解除は何としても勝ち取る etc。会…

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