「中小企業が日本経済を牽引している」は本当か?
日本は中小企業大国と言われています。現に「日本経済の底力は下町の町工場に象徴される中小零細企業にあり、このことこそが日本の資本主義の特徴である」という考え方をしている日本人はずいぶん多いように感じます。
特にメディアがお決まりと言ってよいほど、そういった風潮でテレビのニュースやドラマで放映するので、国民全体にそのイメージが刷り込まれているのではないでしょうか。
本来、中小企業大国とは、クラフトマンシップのような守るべき技術を脈々と後世に継承するようなモノづくりを行っている中小企業や、大企業では手の届かない地域経済の課題解決を実現するために高いモチベーションで働く経営者がいる活気ある中小企業などが存在する国のことです。
こうした企業は、その成り立ちの性格上、革新性はもちろん生産性の点で周りの平均的な企業よりも優れているため、そういった企業が増えていくと、生産性の低い企業の悪影響が希薄化され国全体の生産性が高まります。
ただ創業間もない企業は、その規模の小ささから、経営の安定性は当然欠けます。したがって、そうした企業が高い生産性や革新性を維持したまま、あるべき規模へと成長していくためには何らかの支援が必要となる場合があります。そのため日本をはじめとした世界の多くの国で用意されているのが中小企業優遇政策や保護政策というものです。
日本でもかつては、ソニーやホンダのように地域の中小企業から世界的な企業に成長する例が相次ぎ、そうした企業が実際に国全体の生産性や成長性を牽引しました。当時は、日本企業全体の優秀さや革新性は世界に誇れるものであり、日本の人口も右肩上がりで増加して、日本経済そのものが高度経済成長期の真っただ中にありました。
そこからずいぶん時が経ち、人口減少時代にさしかかった現在でも、日本経済はかつての成功体験のイメージを引きずって、多くの日本の中小企業がいまだに生産性や革新性を持てていると過信しているように見えます。果たして実際のところはどうなのでしょう?