(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

10~12月期実質GDP成長率前期比年率+5.4%、2四半期ぶりプラス成長

個人消費前期比+2.7%、緊急事態宣言解除でプラスの伸び率に転じる

新型コロナ第6波の影響で、22年1~3月期実質GDPは弱い数字の見込み

 

 

●21年10~12月期第1次速報値では、実質GDP成長率は前期比+1.3%、前期比年率+5.4%と2四半期ぶりのプラス成長になった。一方、21年10~12月期第1次速報値の名目GDP成長率は前期比+0.5%、前期比年率+2.0%である。こちらも2四半期ぶりのプラス成長になった。

 

●名目GDPの季節調整値は541.85兆円で直近のボトムだった20年4~6月期の512.63兆円と比較すると29.22兆円高い水準だが、直近のピークだった20年10~12月期の545.84兆円からは3.99兆円低い水準になった。またコロナ前、直近のピークだった19年4~6月期の562.56兆円からは20.71兆円低い水準になった。このところ直近のピークの時期が季節調整の影響か、発表の度に過去へとズレている。なお、山際経財相が発表した談話で「おおむねコロナ前の水準回復」と言及したのは、実質GDPの季節調整値で、21年10~12月期は541.39兆円である。新型コロナの感染者が初めて出た四半期である20年1~3月期の544.66兆円と比較すると差は3.27兆円とあと僅かな水準ではある。

 

●ESPフォーキャスト調査2月調査(回答期間:1月28日~2月4日)では、10~12月期の実質GDP成長率の平均予測値は前期比年率+6.06%だった。しかし、新型コロナウイルス感染第6波、まん延防止等重点措置発出の影響で22年1~3月期の実質GDP成長率の平均予測値は前期比年率+1.70%と低い予測値で、低位8名の平均は同▲0.64%と個人消費がマイナスの伸び率になるとみてマイナス成長予測となっている。マーケットでは10~12月期は過去の数字と言った扱いになろう。

 

●9月末までの緊急事態宣言発出の影響などで消費活動が抑制されマイナス成長だった前期比の反動で、10~12月期の実質個人消費は前期比で+2.7%の増加だった。まだ新型コロナウイルスの感染者が少なかった期間であり、飲食・旅行・レジャー関連の支出増も多かったとみられる。ラニーニャ現象が発生し、寒い冬になったことで、冬物需要も出たようだ。実質家計最終消費支出の前期比は+2.8%の増加だった。

 

●実質国内家計最終消費支出の前期比は+2.8%の増加である。その内訳をみると、耐久財の前期比は+9.7%の増加と2四半期ぶりの増加になった。半耐久財の前期比+6.0%と2四半期ぶりの増加に転じた。非耐久財の前期比は▲1.1%と2四半期ぶりの減少に転じた。サービスの前期比は+3.5%と3四半期連続の増加となった。なお、実質雇用者報酬は前期比+0.3%と2四半期ぶりの増加になった。

 

●実質住宅投資は前期比▲0.9%の減少と2四半期連続の減少になった。

 

●設備投資は+0.4%の増加と2四半期ぶりの増加になった。名目の前期比(季節調整済み)は+1.0%と2四半期ぶりの増加である。なお、名目の前期比(原数値)は+3.3%と2四半期連続の増加である。名目の前年同期比は+2.9%と3四半期連続の増加になった。

 

●供給サイドのデータに基づいて算出した、10~12月期の名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は+5.4%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+2.3%であると公表された。法人企業統計が出た時に前年同期比が+2.6%程度より高いかどうか比較することで、10~12月期実質GDP成長率・第2次速報値での設備投資予測の参考となろう。

 

●民間在庫変動の実質・前期比寄与度は▲0.1%だった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫は前期比寄与度▲0.0%、流通品在庫は前期比寄与度+0.1%であった。また、仮置き値の原材料在庫前期比寄与度は▲0.0%、同じく仮置き値の仕掛品在庫は同▲0.1%だった。

 

●実質政府最終消費支出は前期比▲0.3%と3四半期ぶりの減少になった。また、実質公共投資は前期比▲3.3%と4四半期連続の減少になった。公的在庫変動の実質・前期比寄与度は0.0%であった。公的需要の前期比寄与度は▲0.9%だった。

 

●10~12月期外需(純輸出)の前期比寄与度は+0.2%と2四半期連続プラス寄与になった。実質輸出は前期比+1.0%と2四半期ぶりの増加になった。財は前期比+1.6%と2四半期ぶりの増加になった。サービスは前期比▲1.8%と5四半期ぶりの減少になった。実質輸入の前期比は▲0.3%と2四半期連続の減少になった。財に関しては前期比+0.2%と2四半期ぶりの増加になった。サービスは前期比▲2.1%と2四半期連続減少になった。

 

●10~12月期のGDPデフレーターの前年同期比は▲1.3%と4四半期連続の下落になった。一方、国内需要デフレーターの前年同期比は+1.1%と3四半期連続の上昇になった。控除項目の輸入のデフレーターが前年同期比+27.4%と3四半期連続の2ケタの上昇となった影響が出ている。一方、10~12月期の季節調整済み前期比をみると、GDPデフレーターは▲0.8%、国内需要デフレーターは▲0.2%になった。

 

●「令和4年度の内閣府年央試算」の21年度実質GDP成長率実績見込み・前年度比+2.6%を達成するには、21年度残り1四半期で前期比年率+1.2%(前期比+0.29%)が必要である。20年度から21年度へのゲタは+1.7%である。なお、21年度残り1四半期が前期比0.0%だと21年度実質GDP成長率・前年度比は+2.5%になる。

 

 

●また、3月9日公表予定の10~12月期第2次速報値では、3月2日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資や民間在庫変動が改定される。

 

●法人企業統計では民間在庫変動の伸び率は名目の前年同期比で発表される。GDPの第1次速報値では民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は0.0%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、4項目で一番大きなマイナス寄与は流通在庫、次のマイナス寄与は仕掛品在庫、一方、原材料在庫がプラス寄与で、一番大きなプラス寄与は製品在庫ということだ。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年10~12月期実質GDP(第1次速報値)について』を参照)。

 

(2022年2月15日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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