(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

先行CI前月差+0.4で3ヵ月連続の上昇、一致CI▲0.2と3ヵ月ぶりの下降

 

「足踏みを示している」が継続。1月分一致CIの前月差プラスなら「改善」に

 

 

 

●12月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+0.4と3ヵ月連続の上昇になった。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差プラス寄与度に鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指の5系列が前月差マイナス寄与度になった。

 

●12月分の一致CIは前月差▲0.2と3ヵ月ぶりの下降になった。速報値からデータが利用可能な8系列では、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率の3系列が前月差プラス寄与度に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の5系列が前月差マイナス寄与度になった。

 

●最近の一致CIを使った景気の基調判断をみると、21年1月分で「上方への局面変化」に上方修正され、2月分では判断が据え置かれた。3月分で景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に上方修正され、4月分~8月分と「改善」の判断は据え置きになっていたが、9月分では「足踏みを示している」に下方修正され、10月分と前回11月分では「足踏みを示している」の判断が継続となった。

 

●今回12月分でも「足踏みを示している」の判断が継続となった。12月分は一致CIの前月差が下降になってしまった。12月分の3ヵ月後方移動平均は前月差+1.14だが、まだ2ヵ月連続の上昇である。「改善」に戻るためには、「3ヵ月以上連続して、3ヵ月後方移動平均が上昇」という条件があるため、12月分までは「足踏み」のシグナルが点灯したが、1月分で前月差上昇の条件を満たせば、3ヵ月後方移動平均は3ヵ月連続上昇になるので、早ければ3月8日発表の1月分で「改善」に戻りそうだ。

 

●一致CI採用系列で、1月分が判明しているものは、まだないものの、関連データから雰囲気が掴める系列はいくつかある。オミクロン型変異株の感染急増が与えた影響次第ではあるが、生産指数は、製造工業予測指数が1月分+5.2%、また過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値である先行き試算値最頻値は、1月分の前月比+0.6%の上昇の見込みであることから、前月比僅かでも上昇となる可能性が大きそうだ。一方、耐久消費財出荷指数は、昨年1月分前月比は+2.8%だったが、今年の1月分前月比は微妙だが低下の可能性が大きそうだ。関連指標の新車新規登録届出台数・乗用車の前年同期比が21年12月分▲11.1%から22年1月分▲16.1%に減少率が5ポイント拡大しているからだ。

 

●1月分の商業販売額・小売業の前年同月比は微妙だ。1月分の大手百貨店4社の売上高・前年同月比の単純平均は+20.9%で12月分の+9.9%から20ポイント改善している。また、スーパーの売上高・前年同月比を日経ナウキャスト月次売上高でみると、1月分の前年同月比は+1.4%と12月分の同+0.5%から増加率が0.9ポイント増加している。一方、半導体不足の影響が残る新車新規登録届出台数(乗用車)の1月分前年同月比は▲16.1%と12月分▲11.1%からマイナス幅が拡大している。総じてみると、1月分の商業販売額・小売業の前年同月比は12月分の+1.4%から増加率が拡大する可能性が大きいとみる。また、1月分の有効求人倍率は12月分の1.16倍から上昇するとみる。やや先行性がある新規求人倍率は12月分2.30倍で、前月に比べて0.17ポイント上昇しているからだ。さらに、輸出数量指数は、今年の春節の日程が昨年より早いであることから、1月分の前月比はプラスの可能性が大きそうだ。総合的に判断すると、1月分の一致CI前月差は若干でもプラスになる可能性の方が大きそうだ。様々な悪材料はあっても、基調として景気は改善傾向にあることが再確認されよう。

 

 

●12月分の先行DIは66.7%と2ヵ月連続して景気判断の分岐点の50%を上回った。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がプラス符号に、新設住宅着工床面積、マネーストック、東証株価指数の3系列がマイナス符号になった。

 

●12月分の一致DIは68.8%と2ヵ月連続して景気判断の分岐点の50%を上回った。速報値からデータが利用可能な8系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、輸出数量指数の5系列がプラス符号に、有効求人倍率は保合いに、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の2系列がマイナス符号になった。

 

●2月25日発表予定の12月分景気動向指数・改訂値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は2月17日である。また在庫率関連データが2月15日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

 

●12月分景気動向指数・改訂値で、一致CIに労働投入量指数が加わる。労働投入量指数は、雇用者数(非農林業)と総実労働時間指数(調査産業計)の2つの系列を掛け合わせて作られている。内訳をみると、雇用者数(非農林業)は労働力調査のデータで前月比+0.7%の増加であることが判明している。一方、総実労働時間指数(調査産業計)は毎月勤労統計・速報値は、2月8日に発表される。また、12月分確報値は2月24日に発表される。また、生産指数関連データが2月16日発表の確報値段階で、また商業動態統計関連データが同じく1月18日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

 

●1月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。日経商品指数の1系列が前月差プラス、消費者態度指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差マイナスである。

 

●また、1月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列では、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列がプラス符号に、消費者態度指数、東証株価指数の2系列がマイナス符号になることが判明している。1月分速報値段階の先行DIは22.2%以上77.8%以下になることが確定している。

 

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年12月分景気動向指数(速報値)』を参照)。

 

(2022年2月7日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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