(※写真はイメージです/PIXTA)

「活性酸素は身体に悪い」という話は広く知られていますが、活性酸素がどのようにできるのかまで知っている人は少ないのではないでしょうか。今回は、がんや心血管疾患、脳血管性疾患といった慢性疾患の大きな要因となりうる活性酸素がどのような仕組みで発生するのか、身体にどのような作用を起こすのかを見ていきましょう。※本連載は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師による書下ろしです。

性質が違う4種の活性酸素をどう処理するか?

では、ミトコンドリア系でエネルギーを作る過程で発生する4種の活性酸素を、私たちの身体がどのように処理しているのかを見ていきましょう。

 

①一重項酸素(1O2)

第一段階でできる活性酸素です。これは、私たちの体内にあるシステムだけではうまく中和することはできません。食物に含まれる抗酸化ビタミン(ビタミンAやビタミンE)が中和します。

 

②スーパーオキサイド(O2)

第二段階で発生する活性酸素です。身体の中で一番多く発生します。活性酸素としての悪性度は中程度で、次に述べる過酸化水素よりも少し強いくらいです。生体におけるスーパーオキサイドは、身体の外から細菌などが入ってきた時に白血球から放出され、菌を殺す作用があります。活性酸素も本質的には、私たちの身体を守る働きがあるのです。これは、私たちの身体の中にある抗酸化酵素(SOD)やビタミンCが中和してくれます。SODによって次に説明する過酸化水素に変化します。

 

③過酸化水素(H2O2)

第三段階でできる活性酸素です。活性酸素としての“悪性度”は一番弱いですが、一番長く体内に残存します。スーパーオキサイドと同様、菌を殺す作用があります。カタラーゼやペルオキシダーゼという抗酸化酵素によって中和されます。

 

ちなみにがん治療にも用いられる「高濃度ビタミンC点滴」は、ビタミンCを大量に点滴することで身体の中に過酸化水素が発生することを利用したものです。私たちの身体の正常細胞はカタラーゼを持っているので、即座に過酸化水素を中和し影響はありませんが、がん細胞はカタラーゼを持たないために酸化して死滅するという作用機序です。

 

過酸化水素の一番の問題点としては、鉄イオンや銅イオンが存在すると、真っ二つに分かれてヒドロキシラジカルという活性酸素になることです。ヒドロキシラジカルについては次に述べますが、身体の中で発生する活性酸素の中で一番反応性が高く、凶悪な活性酸素なのです。過酸化水素からヒドロキシラジカルが発生する反応をフェントン反応といいます。過酸化水素自体はそれほど悪性度は高くなくても、寿命が長く身体に残存しやすいです。それが、フェントン反応を起こすと一番凶悪なヒドロキシラジカルに変わるのです。

 

 H2O2 → 2・OH

     ↑

  フェントン反応

 

④ヒドロキシラジカル(・OH)

最後の第四段階でできる活性酸素です。先ほども書いたように一番凶悪な活性酸素です。人間が持っている抗酸化酵素では対抗できるものがありません。病気などの発生に一番関係している活性酸素であるといわれています。食物に含まれている、ビタミンEやさまざまな抗酸化物質(カロテノイド、フラボノイド、ポリフェノール)の助けを借りることで中和します。

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