(※写真はイメージです/PIXTA)

「活性酸素は身体に悪い」という話は広く知られていますが、活性酸素がどのようにできるのかまで知っている人は少ないのではないでしょうか。今回は、がんや心血管疾患、脳血管性疾患といった慢性疾患の大きな要因となりうる活性酸素がどのような仕組みで発生するのか、身体にどのような作用を起こすのかを見ていきましょう。※本連載は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師による書下ろしです。

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がん、動脈硬化などを起こす主犯、「活性酸素」とは?

慢性疾患のうち、死因の上位を占めるがんや心血管疾患、脳血管性疾患の発症には活性酸素が深く関係しています。がんや動脈硬化が起こらないようにするためには、この活性酸素の発生をうまくコントロールすることが重要です。まずは活性酸素がどのような仕組みで発生するのかを見ていきましょう。

 

活性酸素とは、化学的に説明すると「電子を失って不安定になった酸素分子」のことです。酸素分子は原子核の周りに16個の電子が回っていますが、電子が失われることで、不安定になり「活性酸素」となります。化学の授業で習ったかと思いますが、電子を失うことを「酸化」したといい、逆に電子を得ることを「還元」したといいます。そして、電子の受け渡しをすることを「酸化、還元反応」というのです。

 

活性酸素は、自分自身電子が欠乏した状態なので、相手の分子から電子を奪おうとします。そして、自分自身は「還元」して安定化するのです。

 

身体を酸化させるのは活性酸素だけに限りません。活性酸素に電子を奪われた分子は、酸化することで不安定になり、また別の周りの分子から電子を奪おうとします。このように、電子の奪い合いが次々に連鎖していくのです。

 

たとえば、身体の細胞膜を作っている脂質が活性酸素によって酸化すると、非常に不安定な「過酸化脂質」というものになります。活性酸素と同じくらいの酸化作用を持つ過酸化脂質は、細胞膜の中に組み込まれている周りの分子から電子を奪って相手を酸化させます。

 

細胞膜の表面には、細胞外からのホルモンやサイトカインなどと結合して情報を細胞内に伝える「受容体(レセプター)」というタンパク質が組み込まれています。細胞膜の脂質が酸化して、過酸化脂質になることによって、受容体が正しく働かなくなり、これらの情報がうまく伝わらなくなることがあるのです。

 

このように、私たちの身体にある分子は酸化すると本来の機能を果たすことができなくなります。身体の中に活性酸素がたくさんたまった状態になると、電子の奪い合いが連鎖し、身体の状態が次々と悪くなっていくわけです。

 

では、この活性酸素は一体どこから発生してくるのでしょうか? 次に活性酸素が体内で発生する過程について見ていくことにしましょう。

 

次ページ活性酸素はどのようにしてできるのか?

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