【関連記事】がん、動脈硬化などに繋がる「活性酸素」…なぜ発生するのか?
エネルギーを作る上で活性酸素の発生は避けられない
活性酸素は、ミトコンドリアでエネルギーを作る過程でどうしてもできてしまうものです。解糖系なら酸素を使用しないので、活性酸素を発生することなくエネルギーを産生することができますが、効率が悪く、持続的にエネルギーを産生するのには向きません。現実的にはミトコンドリアでのエネルギー産生を放棄することはできないのです。そのため、酸素を燃やすことによって効率的にエネルギーを作りながら、活性酸素をいかに制御するかということが大切になってきます。
体内で発生する活性酸素には4種類あります。中でも一番凶暴性の高い「ヒドロキシラジカル」は、慢性疾患の原因となるため体内に大量に発生させないことが重要です。さらに、中和する酵素が体内には存在しないため、外来性の抗酸化物質を取り入れないといけません(【⇒関連記事:『がん、動脈硬化などに繋がる「活性酸素」…なぜ発生するのか?』】)。
しかし、体内には“活性酸素を処理するシステム”がある
発生した活性酸素をスムーズに中和するために、私たちの体内には抗酸化ビタミン、抗酸化物質のネットワークが形成されています。
■抗酸化ビタミンのネットワークとは?
最初に活性酸素を中和するのは主にビタミンCです。活性酸素を中和したビタミンC自身は酸化されます。酸化したビタミンCは、次にビタミンEが中和します。酸化したビタミンEは次にコエンザイムQ10という抗酸化物質が中和します。このように身体の中には活性酸素を連携して中和するネットワークが形成されているのです。活性酸素が起こした炎症を消していくバケツリレーのようなものだと考えていただいてもいいかもしれません【図表】。
最終的には、食物の中に含まれているフィトケミカルやポリフェノールといった抗酸化物質が、身体に発生した活性酸素を中和してくれます。抗酸化作用のある物質というのは、結局は活性酸素に渡す電子をたくさん持っている分子ということです。自分の持っている電子をたくさん渡すことによって、活性酸素や活性酸素によって酸化した抗酸化物質を中和するのです。
一番凶悪な活性酸素であるヒドロキシラジカルの中和にはビタミンEが有効です。色のついた野菜や苦味やあくの強い野菜はフィトケミカルをたくさん含んでいます。また、抗酸化力をうたったサプリも山のように発売されています。
身体に多くの活性酸素が発生している状況では、こういった抗酸化ビタミンや抗酸化物質のサプリメントをたくさん取ることは一定の効果があると思います。
しかし、こういった抗酸化サプリを飲むことは、バケツリレーで目先の火事を消しているのに過ぎません。火元を消さない限り、バケツリレーを永遠に続けなくてはならないのです。
■抗酸化治療は根本的な治療ではない
治療にはいろんなレベルがあっていいと思いますが、今自分が行っている治療が何を目的としているのかを知っておくことは大切です。
疾患として実際に起こってしまったがんや脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞の治療はとても重要ですが、起こってしまった病気を治すという意味では、「事後処理」であることは免れません。
病気が起こるプロセスを川の流れに例えると、がんや動脈硬化などの慢性疾患が起こる状態の上流には活性酸素が大量に発生している状態があります。しかし、活性酸素が大量に発生する状態のさらに上流には慢性炎症という根本原因があるのです。
そして、この活性酸素を減らそうとする「抗酸化治療」は、「対症療法」より上流に近い治療だということができるでしょう。慢性炎症の原因を突き止め、解決する「抗炎症治療」のほうがより根本的で重要だといっていいかもしれません。
では活性酸素が大量に発生するより根本的な原因、「慢性炎症」とは何なのでしょうか? 次に、そのことを見ていきたいと思います。