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子どもがなければ、亡き配偶者の親族も相続人に
子どもがいない世帯が増えていることは、以前の記事『持ち家あり、子どもなし…相続人たちを苦しめる「ひとり身高齢者」の遺産』でも指摘しました。ただし、その現象自体は結婚をしない自由、子どもを持つ・持たないといった選択の自由があることの証左であり、悪い側面ばかりではないでしょう。また、少子化の傾向は日本だけでなく、世界の先進国にも見て取ることができます。
ひるがえって、これをごく身近な話として見るならば、子どもを持たない方の場合、しばしば「亡くなったあと」に問題が発生します。よくトラブルとなるのは、自宅不動産についてです。
たとえば、子どものない夫婦の夫が亡くなった場合、遺言がなければ、夫の兄弟姉妹が、また兄弟姉妹が亡くなっていても甥姪がいれば、法定相続人は妻(法定相続分4分の3)、夫の兄弟姉妹・甥姪(全員で法定相続分4分の1)となります(親が存命なら親が相続人となりますが、順番を考慮すれば兄弟姉妹が相続人になる可能性が高いでしょう)。
そのため「妻+夫の兄弟姉妹や甥姪」とで、夫の遺産をどのように分けるか話し合いをする必要があります。
長年連れ添った夫婦とはいえ、相手の兄弟姉妹や甥姪と、日常的に交流を持っている人は少ないのではないでしょうか。いままでほとんど交流のなかった配偶者の親族を何人も集め、財産の分け方を話し合うのは、非常に気の重いことだと思います。なにより、配偶者の兄弟姉妹との関係が良好でない場合、話し合いが難航する可能性もあります。
スッパリと分割できる財産構成ならいいが…
法定相続分どおり、被相続人の遺産をテキパキと分割すればいいではないか、それほど難しくないのでは…と思われるかもしれません。
ですが、妻が暮らす自宅について、法定相続分通り夫の兄弟姉妹の持分を相続登記しても、本質的な解決にはなりません。いざというとき(たとえば、自宅を売却して老人ホームの入居費用に充てたい場合など)に、売却もままならないでしょう。
兄弟姉妹に持分を放棄してもらう代わり「代償金」を払うケースもあります。しかし、自宅の評価額をいくらにするのか等、簡単に遺産分割協議がまとまらないケースもあります。
自宅は文字通り、残された妻がいま現在住んでいる不動産です。不動産を売却すれば、明確に現金価値を表せますが、生活の拠点を簡単に手放すことはできません。
自宅の評価額についても、固定資産税の評価額や路線価評価額、公示価格、実売価格などさまざまな評価方法があります。相続開始時の実売価格で評価したいところですが、実際には「売却しない(できない)」自宅不動産ですので、結果論としては「机上の査定」になってしまいます。
また、被相続人の死亡までに、被相続人の預貯金を介護や病院代などで使ってしまっているケースもあります。分け合える預貯金がなく、相続財産が自宅しかないようなケースで遺産分割調停になるケースが多くみられます。
遺産分割の調停事件では、遺産総額が5000万円以下のケースが全体の4分の3以上を占めています※。
※ 出典:裁判所ホームページ:司法統計年報家事事件編(令和2年度)
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/287/012287.pdf
東京をはじめとする都市部では、自宅不動産の価値が数千万円になる場合も多く、そうなれば、財産の大半が自宅不動産という人もいるでしょう。
相続にあたり重要となってくるのは、財産総額の多寡ではなく、「可分できる財産が多いか、少ないか」なのです。それにより、相続が面倒になるかどうかが決まるといえます。
近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士
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