(※写真はイメージです/PIXTA)

自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を自書し、印を押さなければなりません。では、必要なポイントがそろっていても、遺言書の全文が日本語ではなく英語の場合「有効な遺言書」として扱えるのでしょうか。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が解説します。

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遺言書はあるのだが、英語で書かれていて…

 相談内容 

 

父が亡くなりました。語学が堪能だった父は、遺言書を英語で記していました。署名も英語ですが、押印の捺印はあります。

 

これは有効なものなのでしょうか。また、これをもとに、相続登記などの不動産の名義変更手続きは可能でしょうか?

遺言書として十分な内容であれば、有効の可能性が高い

 回 答 

 

結論として、被相続人が残した遺言書が、内容としても遺言と判断するに十分なものであれば、十分有効であると思われます。

 

自筆証書遺言と考えられ、家庭裁判所での検認の手続きが必要となりますが、その際には「遺言書全体の日本語翻訳」などの添付が求められると思われます。

 

ちなみに、外国語で書かれた遺言書関連の事例ですが、印鑑の押印のない外国籍の方の遺言書において、遺言の絶対的な要件である押印を緩和して、例外的に署名で遺言の有効性を認めた判例もあるようです。

 

最高裁判所判例 昭和49年12月24日

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55144

「押即を欠くことによつて遺言書の真正を危くする虞れはないかどうか等の点を検討した上、押印を欠く遺言書と雖も、要式性を緩和してこれを有効と解する余地を認めることが、真意に基づく遺言を無効とすることをなるべく避けようとする立場からみて、妥当な態度であると考えられる。」

 

ただこれは、あくまで「押印文化の無い外国籍」の方だから拡充して認められた例外であり、逆説的に検討すれば、日本人の方の場合、いくらほかの言語が堪能とはいえども、押印のない遺言書は無効と判断される可能性が高いともいえるのではないでしょうか。

 

*本件は業務上の経験と個人的な見解とに基づき記載しておりますので、内容の正確性、法的整合性等ついては一切の保証をできかねます。各相続のケースでは各専門家の指導の下、個別具体的な判断お願い致します。

 

 

近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士

 

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本記事は、司法書士法人 近藤事務所が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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