「企業の未来」に賭けるのがエクイティ投資の本質
前回の続きです。今回は、エクイティへの投資についてより詳しく説明します。
エクイティへの投資には、単にお金の貸し借り以上の意味があります。エクイティへの投資、つまり株式の購入は、その会社や事業の成長性を見込んで資本参加することです。例えば、有名ベンチャー・キャピタルのセコイアキャピタルが、創業したばかりのグーグルやヤフーにお金を出して、彼らのビジネスを助けたことこそがエクイティの本質です。
例えば、あなたの友人がスマホのアプリをつくる会社を興したとしましょう。創業資金は貯金から900万円を用意しましたが、資本金1000万円にするにはちょっと足りないんだとこぼしています。
そこであなたは、自分の貯金から100万円を用立てることにしました。もちろん、いついつまでに返済してほしいなんてことは言いません。「いつでもいいから」というあなたに友人は大感謝し、「いつか必ず倍にして返すから」と約束します。
あなたは知りませんが、友人はあなたを会社の株主にしていました。資本金1000万円のうちの100万円を提供したあなたは、この会社の所有権の10分の1を手に入れたことになります。
例えばこの会社の1株の株価が10万円と設定された場合、発行される株数は100株ですから、あなたは10株(100万円)を所有することになるわけです。これがエクイティへの投資です。
とはいえ、起業したばかりのこの会社には売り上げも利益もほとんどありませんから、あなたへのリターンはまったくありません。もちろん、あなたもリターンを期待してお金を出したわけではないでしょう。100万円は彼にあげたつもりでいました。
やがて月日が経ち、いつのまにか友人の会社のアプリは大人気になっていました。課金アイテムがどんどん売れて、メディアにもとりあげられるようになりました。
そんなある日、彼が200万円を持ってやってきます。利益がたくさん出て、会社の設備投資に使う内部留保を差し引いてもだいぶ余るから、株主に配当金を出すことにしたんだと言うのです。
株主への配当とは、会社に出資してくれた株主に対する、会社の利益からの分け前(リターン)です。
会社が成長しているあいだは、利益のすべてを次の事業への投資に使ってしまうので配当が出ないことも多いのですが、友人が言うには、あまりにも儲けすぎたので配当として株主に還元することにしたのだそうです。こうしてあなたの出資した100万円は倍になって返ってきました。
また、配当金を受け取っても、株主としての権利がなくなるわけではありません。あなたはその後もなお、その会社の株を10株保有し、会社の所有権の10分の1を持ち続けています。
ですから、この先も会社が利益を上げ続ける限り、配当金を受け取ることができるでしょうし、お金に困ったら持っている株を売却することもできます。もちろんそのときには1株の価格は当初の10万円の何倍にもなっているでしょうから、そこでもまた何百万円もの売却益を手にすることができます。
いささか夢物語のようですが、これがエクイティへの投資の本質です。
エクイティへの投資が日本経済の成長の原動力に
また、投資を受ける側の会社から見たとき、デットは返済期日を守って金利をきちんと支払えば後腐れのないただの借金ですが、エクイティの出資者に対しては、返済しなくてもよいだけに恩を感じます。
そのぶん、研究開発に力を入れイノベーションを推進することなどを通して、市場競争を制して会社を成長させて報いねばならないというインセンティブが働くのです。
日本経済の成長という観点から考えたとき、成長の原動力となるのは、期日までに決められた金額を返せばよいデットよりも、イノベーションなどによって会社を成長させようとするエクイティへの投資だと筆者は考えています。