(写真はイメージです/PIXTA)

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の賃貸住宅市場景況感調査によると、2020年下半期の「2ヵ月以上の家賃滞納率」は全国で1.1%。首都圏では0.8%、関西圏では若干高く1.4%率となりました。コロナ禍前の2019年下期と比べて、全国では0.2ポイント増、首都圏でも0.2ポイント増、関西では0.3ポイントの増加となっています。家賃滞納件数が増加するなか、オーナーが取るべき行動とは……。不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田雅也弁護士が解説していきます。

家賃滞納が起きた際に取ってはいけない行動

家賃の滞納が起きたからといって、次のようなことは行わないように注意しましょう。
なぜなら、日本の法令ではこのような実力行使は禁じられているためです。

 

次のようなことを行えば、罪に問われたり損害賠償を請求されたりする可能性があります。

 

なお、これらは賃貸保証契約書の中に「家賃を〇ヵ月以上滞納した場合には、家具を撤去されても一切異議を述べない」「家賃を〇ヵ月以上滞納した場合には、鍵の交換をされても一切異議は述べない」などの条項を入れていたからといって許される行為ではありません。

 

滞納された家賃の回収はこのような実力行使によるのではなく、法的な手順を踏んで解決するようにしましょう。

 

勝手に室内に入り家具などを撤去する

物件のオーナーであり、相手が家賃を滞納しているとはいえ、勝手に入居者の居室に入って家具などを撤去することは認められません。

 

無断で入居者の居室へ侵入すれば、住居侵入罪が成立する可能性がある他、損害賠償請求をされる可能性もあります。また、入居者の家具を勝手に処分すれば窃盗罪に問われる場合もあるでしょう。

 

合鍵を持っていたとしても、無断で侵入したり入居者の持ち物を勝手に処分したりすることはないようにしてください。

 

勝手に鍵を交換する

相手の外出中に勝手に鍵を交換し、居室に入室できないようにすることも、違法な追い出し行為として禁止されています。

 

勝手に鍵を交換すれば住居侵入罪や不動産侵奪罪などに該当する場合がある他、入居者からの損害賠償請求がなされる可能性があるため、行わないようにしましょう。

 

深夜や早朝に押し掛けたりしつこく電話をしたりする

滞納された家賃を回収するためとはいえ、脅迫など相手に恐怖感を与えるような督促行為は禁止されているため、行わないようにしましょう。

 

賃料の取り立てを直接規制したものではありませんが、取り立ての違法性についての考え方としては貸金業法の規定が参考となります。

 

貸金業法で「人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」として禁止されている取り立て行為には、次のようなものがあります。

 

・午後9時から午前8時までの間の取り立て
・勤務先など居宅以外の場所に電話やFAXを送信しての取り立て
・債務者から居宅や勤務先などから退去すべき旨の意思をされたにもかかわらず、当該場所から退去しないこと
・はり紙や立看板などで債務者の借入れに関する事実や私生活に関する事実を公表すること
・債務者等以外の者に対して弁済を要求すること


このような行き過ぎた取り立て行為をすれば恐喝罪等に問われるに問われる可能性があるため、注意しましょう。

家賃滞納発生後、なるべく早く対応を開始すべき理由

家賃滞納が発生した際には、できるだけ早くから対応を開始しましょう。

 

時間が経過し滞納額がかさんでしまえば、全額を回収できる可能性が低くなるためです。また、滞納を放置すれば安易な滞納を重ねられてしまう懸念もあります。

 

では、滞納が発生した場合には、具体的にいつから対応を開始すれば良いのでしょうか?

法的措置は、家賃の滞納が「3ヵ月」続いてから

契約で定めた家賃の支払期日に支払いが確認できなかった場合は、まずは早期に口頭や書面で入金が確認できない旨の連絡をします。

 

ここでの対応が遅くなると、入居者が少しくらいであれば支払期日に遅れても良いと感じてしまい、より長期の滞納につながってしまう可能性があるためです。

 

家賃滞納者に対して契約を解除する旨の内容証明郵便を送付するなどの法的措置へ移行するのは、家賃の滞納が3ヵ月程度続いた時点を目安にすると良いでしょう。

 

1ヵ月や2ヵ月程度の滞納の場合は、うっかりミスなどの可能性も考えられる一方で、3ヵ月以上の滞納となると、物件オーナーと入居者との信頼関係が破壊されたと認められる可能性が高い傾向にあるためです。

 

ただし、新型コロナ禍による生活困窮が理由である場合などには、3ヵ月という表面的な期間をもって信頼関係の破壊とは認められない可能性もあります。そのため、特別な事情がある場合には、個別事情による検討が必要になるでしょう。

 

 

森田 雅也

Authense法律事務所 弁護士

 

 

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本記事はAuthense不動産法務のブログ・コラムを転載したものです。

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