(※写真はイメージです/PIXTA)

深夜、老人ホームで入居者の病院への緊急搬送で家族を病院に呼び出すケースがあります。特に軽症のときに起きがちなのが「なぜこの程度で病院に連れて行ったのか」というクレームです。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者の小嶋勝利氏が著書『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社刊)で、トラブルの要因を解説します。

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深夜の家族呼び出しで家族が激怒するケース

ここでは、多くの子世代が老人ホームに対し、勘違いをしていることについて触れていきたいと思います。

 

多くの家族が抱く素朴な疑問の中に、深夜にホームから呼び出されたという話があります。多くのケースは、事故や病気で医療機関で受診しなければならなくなったケースです。

 

夜中の2時に、ホームより電話があり「具合が悪くなったので、ホームドクターに相談したところ、救急搬送をしなさい、という指示があったのでこれから病院に行きます。ついては、A病院なので今すぐ来てください」というような内容です。多くの家族は、言われたまま、A病院に行きます。

 

実は、問題はここからです。状態が重体であれば、そのまま入院治療とか最悪の場合、そのまま臨終ということになり、言葉は悪いですが、どさくさに紛まぎれて物事はうやむやになっていきます。がしかし、事ことがこじれるケースが、軽症だった場合です。

 

結局、その場で、病院からは経過観察という判定を下され、「老人ホームに帰ってください」ということになった場合、家族からすると、家族の一方的な都合が頭をもたげてきます。

 

それは、「この程度のことで、いちいち呼び出すなよ」「明日は、朝一番で大切な会議があるんだよ」という思いです。そもそも、こういう時に、「自宅」にいると自分たちですべてに対応しなければならなくなるから、高い料金を払って老人ホームに入れているのではないか! という気持ちが湧き出てきます。

 

もちろん、多くのホームでは、入居時に注意事項などの中で、夜間に救急搬送をした場合、家族にも連絡し、身元引受人には病院に来ていただきます、という説明はしているはずです。そして、その説明を聞いた家族は、なんの疑いもなく、「当たり前」と理解するはずです。しかし、家族の当たり前と老人ホームの当たり前は、少し違います。その理由を説明していきましょう。

 

もちろん例外はありますが、おおむね次のような勘違いが原因になっているはずです。老人ホームは、入居者の急変時には、必ず、協力医療機関や入居者の主治医の指示を仰ぐ、というルールになっています。したがって、介護職員や看護職員が、どうするかを勝手に判断することはありません。当然といえば当然です。

 

また、中には、入居者の主治医と老人ホーム側の看護師との間で、事前に約束を交かわしているケースもあります。たとえば、Aさんの場合、発熱が38度以上になった場合、主治医の指示を待たずに速すみやかに病院で受診をしなさい、というような約束です。

 

これは、入居者の既往症によって、その後に来る状態が事前にわかっているので、即、救急対応をすること、という意味になります。そしてこのケースの多くの場合、事前に、主治医が搬送先の医師に対して書いた診療情報提供書という資料をホームに託しています。平たく言うと、「救急搬送をした先の医師にこの手紙を見せてください。医師が見ればわかります」ということです。

 

次ページなぜ病院に連れて行かないのかというクレーム

※本連載は小嶋勝利氏の著書『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社刊)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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