「過去のリターン/リスク」が示唆する今後の動き
前節の記述について、「過去のリターン/リスクについてはそうであっても、今後のリターン/リスクについてはそうとは限らない」という人もいらっしゃるかもしれません。
たくさんは書きませんが、過去の米国大型成長株式と米国ハイ・イールド債券のリスクを計算すると、前者が後者の約3.5倍あります(→52週ローリングの標準偏差を比較し、平均)。
すなわち、米国大型成長株式のリターンが米国ハイ・イールド債券のリターンの約3.5倍超となると、両者の情報レシオは逆転します。
米国ハイ・イールド債券の現在の利回り(=期待リターン)は4.68%であり、米国大型成長株式はこの3.5倍程度のリターンを出す必要があります。それは、利益の伸びかバリュエーションで達成するかですが、一時的に可能であっても、持続不可能に見えます。
あるいは、可能であるとしても、米国大型成長株式と米国ハイ・イールド債券の情報レシオがほぼ同じだとすれば、①変動性が低い資産(=米国ハイ・イールド債券)をポートフォリオに組み入れるほうが「米国大型成長株式100%」よりも望ましく、②両者の相関係数が1を下回るため、異なる資産(=米国ハイ・イールド債券)を組み入れるほうが「米国大型成長株式100%」よりも望ましいと考えられます。
米国ハイ・イールド債券ではなく、米国債ならどうか?
次に気になるのは、「米国ハイ・イールド債券ではなく、米国債ならどうなるのか?」ということでしょう。
上の図と同様、[図表4]には、米国大型成長株式100%のポートフォリオに、今度は、米国債を10%ずつ足していくときの、ポートフォリオの「情報レシオ」の変化を示しています。先ほどの米国ハイ・イールド債券と並べています。
すると、米国債のほうが、情報レシオが高いことがわかります。特に、債券のウェイトが70-90%のときはそうです。しかし、「だったら、米国ハイ・イールド債券ではなく、米国債のほうがいいよね?」とはなりません。なぜならば、取っているリスクが異なるためです。
例えば、「米国大型成長株式30%と米国ハイ・イールド債券70%のポートフォリオ」と、「米国大型成長株式30%と米国債70%のポートフォリオ」とでは、前者のほうがリスクは高く、後者はかなり保守的なポートフォリオです。したがって、この図は、必ずしも「apple to apple」の比較ではありません。