(※写真はイメージです/PIXTA)

全国の中小企業家同友会が推進している「経営指針成文化」運動で、「労使対等」という考えが受け入れられず脱会せざるをえない会員がいるという。なぜ「労使対等」を大切にしているのか、清丸惠三郎氏の著書『「小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社、2019年10月刊)で明らかにします。

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中小企業家同友会の会員数が増えている

2018年7月15日付の朝日新聞朝刊は、連載中の「平成経済」において「年5万減った中小企業『社会の主役』は大廃業時代へ」という大見出しで、中小企業の直面する問題を報じている。リード部分のみを紹介すると、「みなさん、ご存じですか? 日本にある企業の99・7%が中小企業で、働き手の7割が勤めていることを。『社会の主役は中小企業だ』と宣言する文書が閣議決定されていることを。そんな主役たちが姿を消し続ける(後略)」。

 

続く記事の前半で、中小企業家同友会が推進してきた「中小企業憲章」の国会決議に向けて奮闘する中村高明・中小企業家同友会全国協議会(中同協)副会長(前福岡同友会代表理事)の姿が紹介されているのだが、ここで注目したいのは、いささか大仰に見える朝日新聞の見出し「年5万減った中小企業」という表現である。近年の『中小企業白書』などを見ると傾向はやや緩やかになってきてはいるものの、それに近い倒産、あるいは休廃業・解散件数が毎年続いていることは否定できない。

 

全国の中小企業者が中核的会員を占める日本商工会議所と傘下の各地会議所の会員数が減少傾向にあるのは、それゆえ当然と言っていいだろう。商工会議所に限らない。中小企業経営者やその後継者が主たる会員となっているいくつかの全国組織を調べてみても、「会員の減少が止まらない」だとか「今期こそは、反転拡大に持っていきたい」などといった切実な声がホームページ上に溢れている。

 

ところが同友会の会員に限っては地区によって差はあるものの、全体として確実な増加曲線を描いている。あえて驚くべき例を挙げれば、「3・11」に際して市内699の事業所のうち604社が被災した岩手県陸前高田市を含む岩手同友会気仙支部でさえも、会員数は減るどころかわずかながらも増えているのだ。

 

宮城県での定時総会において、中山英敬中同協幹事長は「(全体の会員数が)9年にわたり純増」と述べているだけでなく、「(全47同友会のうち)12同友会で、過去最大の会勢を達成した」と誇らしげに報告している。

 

このような同友会会員数の着実な増加に対して、「中小企業の絶対数に対してまだまだ同友会の会員が少ないからだ」と指摘する声がライバル団体から聞こえてこないでもない。しかし同友会とほぼ同じ、あるいはより小さい規模でありながら、会員数が伸び悩んでいる団体は少なくないのだ。否、それがほとんどだと言ってよい。とすると、先の指摘は全く当たっていないことになる。

 

確かに各同友会は代表理事、事務局長を先頭に会員獲得のために大変な努力を払っているが、逆風吹きすさぶ時代の中で努力だけではない別の誘引力が、同友会という中小企業の運動体に潜んでいることを窺わせる。引き続き同友会運動の歴史をたどりつつ、その辺りを探っていきたい。

 

1957年に東京で日本中小企業家同友会が設立されると、数年のうちに考えを同じくする会が大阪(名称は当初、関西中小企業同友会)、愛知、福岡、神奈川に相次いで誕生する。これら同友会は交流を重ね、69年11月17日、5同友会に、北海道、京都の2準備会が加わり、「同友会運動の全国のセンター」と位置づけられる中同協が設立される。

 

もっともこの間、日本中小企業家同友会が都内の企業中心だったことから東京中小企業家同友会と改称する一方、その前段で労働政策をめぐって分裂騒動が起きたりしており、関西中小企業同友会も66年、大阪府中小企業家同友会と名称変更したのち、中国の文化大革命の評価をめぐって一部が分裂、大多数の会員があくまでも政治運動と距離を置くことを原則とする方針を堅持、今日に至っている。

 

次ページ中小企業家同友会はどんな団体なのか

※本連載は、清丸惠三郎氏の著書『「小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社、2019年10月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。肩書等は掲載時のまま。

小さな会社の「最強経営」

小さな会社の「最強経営」

清丸 惠三郎

プレジデント社

4万6千人を超える中小企業の経営者で構成される中小企業家同友会。 南は沖縄から北は北海道まで全国津々浦々に支部を持ち、未来工業、サイゼリヤ、やずや、など多くのユニークな企業を輩出し、いまなお会員数を増やし続けて…

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