(※写真はイメージです/PIXTA)

2020年度、日本における認知症の推定患者数は600万人を超えました。認知症の増加は日本だけでなく、世界で共通した課題ですが、治療の仕方は国によって大きく異なるようです。埼玉森林病院院長で認知症専門医の磯野浩氏が解説していきます。

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    一方、日本の「認知症ケア」は…

    日本ではまだまだ、病院や、施設然とした建物の中で、決まった時間以外は部屋から出られず、大半はベッドの上で過ごすというのが認知症ケアの標準的なスタイルです。

     

    万一の事故や入所者同士のトラブルがあったらたいへん、と常に目の届く範囲に入所者がいるようにし、1日の過ごし方を施設が決め、管理をするのが当たり前になっているように思います。

     

    入所者は「お世話をする人」「保護する人」という考え方で、スタッフとの関係性がつくられたり、施設の運営がなされたりしているともいえます。

     

    欧米と比べ薬物療法偏重で管理主義的な傾向が強く、ホグウェイからは学ぶべきものが多いと痛感しています。

     

    また、海外ではコリンエステラーゼ阻害薬の副作用による患者への不利益が問題視され、できるだけ使わないようにという流れになってきています。

     

    と同時に、薬物そのものに頼らない非薬物療法に目が向けられています。薬を使わずに、脳を活性化して、残っている認知機能や生活能力を維持するという考え方です。

     

    世界ではすでに、非薬物療法が主体となっており、薬物療法は補助的なものへとシフトしつつあるのです。

     

    非薬物療法にも音楽療法、回想法、園芸療法などさまざまなものがありますが、一つのアプローチとして「生活のなかで本人の出番をつくる」ことがあり、自立を促すのに効果的といえます。家庭内や地域で本人の役割をつくると言い換えてもいいと思います。

     

    認知症が進行して、日常生活でうまくできないことや失敗が多くなると、家族は「それはやらなくていいよ」「じっとしていて」などと言って、本人の家庭内での役割や出番を徐々に減らしていきたがります。しかし、本人にとっては、何もすることがなくなればただ呆然としているしかなく、認知機能の低下を進めてしまうことになります。

     

    また、「何もしないでもよい」状況は精神的にもつらいものです。感情のやり場を失った挙句、突然爆発するなどで、BPSD(認知症状に伴い起こる暴言や暴行、徘徊、うつ状態、妄想等の行動・心理症状)が強く出てしまう恐れもあります。

    次ページでは家族はどのように「出番」を作ったらよいのか?

    ※本連載は、磯野浩氏の著書『認知症診断の不都合な真実』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    認知症診断の不都合な真実

    認知症診断の不都合な真実

    磯野 浩

    幻冬舎メディアコンサルティング

    超高齢社会に突入した日本において、認知症はもはや国民病になりつつあります。そんななか、「認知症」という「誤診」の多発が問題視されています。 高齢者はさまざまな疾患を併せ持っているケースが多く、それらが関連しあ…

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