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ある日突然、「頼みの綱」である妻が消えた…
「どうもおかしい!」春山病院(仮名)で会計を担当する山崎さん(仮名、以下すべて名前は仮名)は、首をかしげました。
この病院の入院費は、前月分を毎月10日から15日までの間に窓口持参か振込みで支払うようになっています。
1年前から入院している吉村さん(71歳、男性)の奥さんは、本人のお見舞いかたがた、これまで毎月欠かさず窓口に来て支払いを行ってきました。
奥さんは支払いの際、「いつも主人がお世話になっております」と深々と頭を下げます。これまで支払いが遅れたことはなく、しっかりした奥さんだという印象を山崎さんは持っていました。
ところが、今月は期限を過ぎ数日経っても奥さんが支払いにやってくることはありません。
不安を感じた山崎さんは入院時の吉村さんに関する資料を広げました。自宅の電話番号を確認し、すぐに連絡を入れました。ところが、呼出音は鳴り続けるも、一向に出る気配はありません。
翌日も連絡を取ろうとしましたが、結果は同じ。午前と午後に分けて連絡してみましたが、誰も受話器を取ることはありません。山崎さんは嫌な予感がしてきました。「奥さんが入院してしまったのか。いや、支払いが難しくなったのか」など良からぬことを色々と考えてしまいます。
電話は諦めて、今度は手紙を出してみることにしました。手紙には、〝もしお支払いが難しいご事情がありましたら、ご相談ください〞と念のため一言添えました。
手紙を発送した後、奥さんが病院に現れたり、連絡が入ることを期待しました。しかしそれは淡い期待でした。奥さんと連絡が取れない状況は続きます。
本来であれば、夫である吉村さんに確認したり連絡を取ってもらいたいところです。しかし、残念ながらそれが無理なのです。本人とは話ができないのです。
吉村さんは脳梗塞と持病が原因で合併症を発症しており、寝たきり状態になっています。いつも上を向いている体勢で、これ以上体が硬直しないようリハビリ担当者が定期的にマッサージを行っています。
奥さんと連絡が取れない状態はその後も続き、請求額は増える一方です。3カ月で滞納額は20万円を超えてしまいました。このままではどうにもならないと、山崎さんは再度入院時の資料に目を通しました。
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