中小企業の「退職金」事情…半数以上が採用している制度に「多くのデメリット」

中小企業の「退職金」事情…半数以上が採用している制度に「多くのデメリット」
(※写真はイメージです/PIXTA)

「退職一時金」を準備するために、中小企業はどのような制度を使っているのでしょうか。ここでは「中小企業退職金共済(中退共)」について、「企業型確定拠出年金」と比較しながら、企業年金コンサルタントの細川知宏氏が解説していきます。

利回りが低い?「中退共のデメリット」

■中退共のデメリットと企業型確定拠出年金のメリット

 

長い歴史があり、多くの中小企業が加入している中退共ですが、企業型確定拠出年金(※)と比べると、デメリットや制限となる部分も多数あります。それらを確認するとともに、企業型確定拠出年金と比較してみます。

 

※ 企業から拠出された掛金とその運用収益との合計額をもとに、将来の給付額が決定する年金制度。

 

①掛金の少なさ

 

中退共の掛金は最大で1ヵ月3万円、年間36万円までです。30年間、最大金額を掛けたとしても、掛金総額は1080万円にしかなりません。

 

新入社員、若手社員が加入するにはいいかもしれませんが、掛けられる年数が少なくなる中途入社社員や、中堅、ベテラン社員が新たに加入する場合は、最大掛金を掛けたとしても、将来の受け取り金額が不十分だと感じられるかもしれません。

 

一方、企業型確定拠出年金では、1ヵ月5万5000円までと、中退共の約1.8倍の掛金を拠出することができます。

 

②運用利回りの低さ

 

中退共から受け取れる退職給付金は、基本退職金+付加退職金となっています。基本退職金の予定運用利回りはおおよそ1%とされています(法律により変更の可能性あり)。また、付加退職金は、そのときの金融情勢にもよりますが、「0」となる年も多く、加えられたとしても非常に低い利回りなので、増えることはほとんど期待できません。

 

また、金利がつくのは加入から4年目以降からです。掛金額の少なさも併せて、中退共だけで十分な老後の生活保障を得ることは難しいと考えられます。

 

企業型確定拠出年金は、運用内容によって利回りが異なりますが、過去の実績からは、3~5%程度の利回りを期待することは十分可能です。運用期間が長くなればなるほど、運用利回りの差が大きくなります。

 

③企業規模による制限

 

中退共に加入できる企業は、規模による制限があります(例:小売業の場合、常用従業員数50人以下または資本金5000万円以下など)。会社が成長してある程度の規模になると加入できなくなります。企業型確定拠出年金には、企業規模による加入制限はありません。

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※本連載は、細川知宏氏の著書『社員を幸せにしながら社長の資産を増やす方法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

社員を幸せにしながら社長の資産を増やす方法

社員を幸せにしながら社長の資産を増やす方法

細川 知宏

幻冬舎メディアコンサルティング

社員の退職金・年金を「見える化」し、社長の老後資金も増やせる⁉ 中小企業だからこそ活用できる「企業型確定拠出年金」を徹底解説。 本書では、大手証券会社勤務を経てIFA(金融商品仲介業者)となり、数々の「企業型確定…

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