中小企業の「退職金」事情…半数以上が採用している制度に「多くのデメリット」

中小企業の「退職金」事情…半数以上が採用している制度に「多くのデメリット」
(※写真はイメージです/PIXTA)

「退職一時金」を準備するために、中小企業はどのような制度を使っているのでしょうか。ここでは「中小企業退職金共済(中退共)」について、「企業型確定拠出年金」と比較しながら、企業年金コンサルタントの細川知宏氏が解説していきます。

11ヵ月以下で退職した場合、退職給付の支給は…

④社長、役員が加入できない

 

中退共は、社長や役員は加入することができません。企業型確定拠出年金は社長や役員も加入可能です。

 

⑤従業員は原則全員加入させなければならない

 

中退共は、従業員は原則全員加入しなければなりません。例えば、勤続3年以上の者だけを加入させるといったことはできないのです。

 

企業型確定拠出年金では、選択制を導入すれば加入は任意です。

 

⑥加入期間が短いと不利になる

 

中退共は、長期加入者の退職金を手厚くするように制度が設計されているため、加入期間が短い時点で退職などをすると、極端に不利になります。

 

例えば、退職給付が支給されるには、加入期間が12ヵ月以上なければならず、11ヵ月以下で退職した場合は支給は「0」で、完全な払い損です。また、12ヵ月以降も、23ヵ月までの退職の場合、支給額は掛金支払い額よりも少なくなります。

 

24ヵ月から42ヵ月までの間の退職で、ようやく、掛金額と支給額が同じ金額、そして、43ヵ月以上の加入期間となって初めて、掛金額よりも支給額が多少増え始めるという具合です。

 

⑦事業主返還ができない

 

中退共の退職金は、中退共から直接従業員に支払われます。1~3年程度での短期退職者や、トラブルを起こして辞めた社員などに対しても、規定どおりの退職金が満額支払われることを経営者が不満に感じるケースもよく見られます。

 

なお、加入から1年以内に退職した場合は、退職金は支払われませんが、掛金の会社への返還はなく、掛け捨てになります。

 

企業型確定拠出年金では、加入から3年以内の自己都合の退職時には、掛金相当額を事業主に返還する設定が、規約によって可能です。

 

 

細川知宏

企業年金コンサルタント

※本連載は、細川知宏氏の著書『社員を幸せにしながら社長の資産を増やす方法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

社員を幸せにしながら社長の資産を増やす方法

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細川 知宏

幻冬舎メディアコンサルティング

社員の退職金・年金を「見える化」し、社長の老後資金も増やせる⁉ 中小企業だからこそ活用できる「企業型確定拠出年金」を徹底解説。 本書では、大手証券会社勤務を経てIFA(金融商品仲介業者)となり、数々の「企業型確定…

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