(※写真はイメージです/PIXTA)

米国在住の夫婦。米国籍の夫が亡くなったことで、妻は夫所有の横浜市のマンションを相続したいと考えています。どのような点に注意が必要なのでしょうか。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が、実例をもとにわかりやすく解説します。

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米国籍の夫名義の「横浜のマンション」を相続したい

 相談内容 

 

アメリカ在住の夫婦です。先日、アメリカ国籍の夫が亡くなりました。夫はリタイアする前、ビジネスマンとして数ヵ国に赴任経験があります。

 

日本に赴任していたときに横浜市のマンションを購入しましたが、その後、アメリカ本土やシンガポールに転勤となったため、マンションは賃貸に出していました。

 

私たち夫婦の最後の住所はアメリカ合衆国です。横浜に保有するマンションの相続手続きをしたいと考えていますが、どのような点に注意すべきでしょうか。

各種権利書の添付等、煩瑣な手続きとなるのを覚悟して

 回 答 

 

被相続人がアメリカ合衆国国籍の方で、相続財産の中に日本の不動産があるケースです。

 

結論として、不動産の登記については、日本国内にある不動産の場合、日本の民法の相続法が適応されることになります。

 

法の適用に関する通則法36条により、被相続人の本国法であるアメリカ合衆国法の相続法がが準拠法となりますが、米国法にも、不動産の相続に関して不動産の所在地国の法律を適応する旨の記述があることから、不動産の相続については日本法が適応されます。

 

ただし、これは被相続人に遺言(last will and testament)がないことが前提です。

 

このように、法の適応が行ったり来たりするようにみえることを「反致」などと呼びます。

 

いずれにしても、遺言書がない場合、相続登記のためには法定相続人の確定が必要です。

 

しかし、アメリカ合衆国をはじめとする多くの国では、日本のような「戸籍制度」や「住民登録制度」という制度も概念も存在しません。

 

そのため、遺言書がない場合の相続を証する書面として、アメリカ合衆国で取得した被相続人の出生証明書、死亡証明書、婚姻証明書など、取得できる限りの証明書を取得したうえで、最後は相続人と思われる方全員から、「このほかに相続人は存在しない」旨の宣誓供述書(affidavit)を作成します。

 

これらに大使館や公証人の認証を受けることにより、日本の「戸籍」に代えるほかありません。

 

なお日本の法務局では、英文ほか、外国語で書かれた書面のみでの登記申請や添付書面を認めていませんので、すべてを和訳をしたうえで、翻訳者の記名捺印が必要となります。

 

またこうしたケースの場合、登記簿謄本上の住所と、被相続人の死亡時点での住所が一致しないことが極めて多くあります。その場合、本来、相続では必要とされない権利証(登記識別情報通知)の添付や、納税通知書などの添付を求められるケースがしばしばある点にも注意が必要です。

 

 

近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士

 

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本記事は、司法書士法人 近藤事務所が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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