(写真はイメージです/PIXTA)

認知症の相続人が相続放棄をするには成年後見人が必要です。しかし、成年後見人と成年被後見人が利益相反の関係にある場合、代理で相続放棄ができないケースがあります。本記事では相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が認知症の親の相続放棄を子どもが代理ですることは可能なのか解説します。

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相続放棄とは

まずは、相続放棄について詳しく解説していきましょう。

 

相続放棄とは、相続放棄をした人が当初から相続人ではなかったこととみなされる、非常に強い効力を持つ手続きです。

 

ここでいう相続放棄とは、家庭裁判所へ申述をすることによって行う手続きのことです。単に一部の相続人が財産を一切承継しない内容の遺産分割協議を成立させることは、法律上の相続放棄ではありませんので、混同しないようにしてください。

 

相続放棄を検討する場面はいくつかありますが、代表的なものとしては被相続人に多額の借金があった場合が挙げられます。では、相続放棄を行うと、どのような効果をもたらすのでしょうか?

 

相続放棄をすることにより、その人は最初から相続人でなかったものとみなされます。相続人ではない以上、被相続人の借金を引き継ぐこともありません。一方で、自宅不動産や預貯金などといったプラスの財産についても、一切承継できなくなります。

 

■相続放棄する場合、「後順位の相続人」へあらかじめ相談を

 

また、相続放棄の効果として、本来であれば相続人にはならないはずであった人が、新たに相続人となるケースがあることも知っておきましょう。

 

たとえば、第一順位の相続人である子が全員相続放棄をしたことにより、第二順位の相続人である両親や、第三順位の相続人である兄弟姉妹が新たに相続人となるような場合があります。

 

これは、被相続人の子が全員相続放棄すると、最初から第一順位の相続人が誰もいなかったこととなり、後順位の相続人へと権利が移るからです。そのため、後々のトラブルを防ぐためには、後順位の相続人へあらかじめ相談をすることをお勧めします。

 

もし、後順位の相続人も相続放棄の手続きをしたいというような場合には、ご自身の相続放棄が終了次第、後順位の方にも、相続放棄の手続きをとっていただくように連絡をする方が良いでしょう。

 

第一順位の相続人が、後順位の相続人に何の相談や連絡もなく、相続放棄をしてしまうと、後順位の相続人にとっては、自分には関係がないと思っていた借金のリスクがある日突然降りかかり、それを逃れるためには自らも手間や時間をかけて相続放棄をしなければならないことになりますので、誰しもあまり良い思いはしません。

「相続放棄」と「遺産分割協議」の違い

前述のとおり、法律上の相続放棄をするためには、家庭裁判所への申述が必要です。これに対して、一般用語として、ある相続人が何も承継しないという内容の遺産分割協議をすることを、「私は相続を放棄した」という場合もあります。

 

では、この両者は何が異なるのでしょうか?

 

両者の最も大きな違いとしては、借金の取り扱いです。当人同士で何も承継しないという内容の遺産分割協議を成立させたとしても、実は被相続人にお金を貸していた人などの債権者には主張できません。

 

たとえば、被相続人の長男が何も相続しない内容の遺産分割協議が成立したとしても、債権者はこの長男に対しても、法定相続分に応じて、被相続人の借金の返済を求めることができるのです。

 

一方、法律上の相続放棄をすれば、債権者はその相続放棄をした人に対して、借金の返済を求めることはできません。

 

この点で、両者には大きな違いがある点を知っておきましょう。その上で、多額の借金を免れたいという目的であれば、必ず家庭裁判所で法律上の相続放棄を行うようにしてください。

 

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