(写真はイメージです/PIXTA)

認知症の相続人が相続放棄をするには成年後見人が必要です。しかし、成年後見人と成年被後見人が利益相反の関係にある場合、代理で相続放棄ができないケースがあります。本記事では相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が認知症の親の相続放棄を子どもが代理ですることは可能なのか解説します。

相続放棄はいつまでにすべき?

では、相続放棄はいつまでに行うべきでしょうか? その期限について解説していきましょう。なお、これから紹介する期限を超過してしまったとしても、状況によっては放棄を認めてもらえる場合があります。お困りの際は、弁護士にご相談ください。

 

■相続放棄の期限は原則「相続開始を知った時から3カ月以内」

 

相続放棄の期限は、原則として、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」とされています。つまり、被相続人が亡くなったその日に亡くなった旨を知った場合、その亡くなった日から3カ月以内ということです。

 

一方で、被相続人の死亡後すぐにはその旨を知らず、その後期間が経過してから亡くなったことを知った場合には、亡くなった日からではなく、知った日から起算します。まずは、この原則を知っておいてください。

 

■「成年被後見人」の相続放棄期限は「成年後見人」が知った日から起算

 

認知症などにより、事理を弁識する能力が常にない状態となってしまっている場合、その人が法律上の行為をするには、成年後見人を選任しなければなりません。このとき、その認知症となっている人を「成年被後見人」、その認知症の人の代わりに法律行為などをする人を「成年後見人」と呼びます。

 

では、相続人に成年後見人がついている場合、その成年被後見人についての相続放棄の起算日は、いつを基準にするのでしょうか?

 

これについては、成年被後見人が相続人となったことを、「成年後見人が」知った日から、期限の3カ月をカウントするものとされています。認知症である成年被後見人が知った日からではないことに注意してください。

相続人が認知症の場合…「成年後見人」の選任が必要

では、認知症の相続人が相続放棄をするにはどうすれば良いのでしょうか?

 

常に事理弁識能力がない状態となっている認知症の人は、自分で相続放棄をすることはできません。なぜなら、このような状態の人が自分で相続放棄をするとなると、不利益を被ってしまう可能性が高いと法律では考えられているからです。

 

たとえば、他の相続人が財産を独り占めするために、認知症の人を騙して相続放棄をさせてしまうかもしれません。また、特に誰からも騙されていなかったとしても、よくわからないまま相続放棄をしてしまう可能性もあります。

 

このような事態を防ぐため、認知症の人が相続放棄をするには、成年後見人を選任してもらうことが必要とされています。選任された成年後見人が、認知症の人の代わりに相続放棄の手続きを行います。

 

なお、相続人の中に認知症の人がいる場合には、その人が相続放棄をする場合だけでなく、遺産分割協議をしようとする際にも成年後見人の選任が必要とされています。

 

■「成年後見人」選任後…本人が亡くなるまで役割は終わらない

 

成年後見人とは、認知症の人などの代わりに法律行為をしたり、本人がしてしまった不利益な契約を取り消したりする役割を担う人です。

 

たとえば、相続放棄や遺産分割協議などは、正常な判断能力がない人が行うと不利益を被ってしまうかもしれません。成年後見人はそうした不利益から成年被後見人を守るため、代わりに手続きを行うのです。また、たとえば訪問販売で不要な商品を契約してしまったような場合に、その契約を取り消すことなども、成年後見人の役割の一つと言えます。

 

なお、選任のきっかけが相続放棄や遺産分割協議であったとしても、これらが済めば成年後見人との関係が終了するわけではない点には注意が必要です。

 

一度成年後見人が選任されると、基本的には認知症である本人が亡くなるまで、その役割は終わりません。

 

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