(写真はイメージです/PIXTA)

認知症の相続人が相続放棄をするには成年後見人が必要です。しかし、成年後見人と成年被後見人が利益相反の関係にある場合、代理で相続放棄ができないケースがあります。本記事では相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が認知症の親の相続放棄を子どもが代理ですることは可能なのか解説します。

成年後見人を決めるのは「家庭裁判所」

それでは、誰が成年後見人となるのかについて解説していきましょう。結論からお伝えすれば、共同相続人であっても、成年後見人となる余地はあります。しかし、必ずしも希望した人が成年後見人になれるとは限りません。

 

成年後見人の選任を申し立てる際に、その候補者を挙げることは可能です。たとえば、成年後見人の家族や、共同相続人を候補者として挙げることもできます。

 

しかし、最終的に誰を成年後見人とするのかを決めるのは家庭裁判所です。候補者として挙げた人が必ずしも選任されるわけではありません。

 

成年被後見人の財産状況に加え、候補者や他の家族との関係性を考慮のうえ、裁判所は成年後見人を選任します。弁護士や司法書士といった専門家が選任される可能性が高いケースとしては、財産が多額である場合のほか、家族との間に争いがあるような場合が一般的です。

 

最近では、家族と専門職を同時に選任の上、まずは専門職後見人が成年被後見人の財産を信託する手続きを行った上で、家族である後見人へと引き継ぐケースもあります(後見制度支援信託といいます)。

 

■共同相続人も成年後見人になれる?

 

成年後見人は、家族などがなる場合もあれば、弁護士や司法書士といった専門家が選任される場合もあります。

 

前述のとおり、最終的に誰を選任するのかは家庭裁判所が決めますが、共同相続人だからといって成年後見人になれないわけではありません。家庭裁判所が状況などから見て適任だと判断すれば、共同相続人が成年後見人として選任されることも十分に考えられます。

成年後見人が相続放棄できるかは状況により異なる

では、成年後見人は、成年被後見人の相続放棄の手続きを行うことができるのでしょうか? 実は、状況によって異なります。これは、成年後見人の役割が、成年被後見人の財産を守ることであるためです。成年後見人が相続放棄をすることができる場合とできない場合に分けて解説しましょう。

 

■成年後見人による相続放棄が認められない場合

 

成年後見人が成年被後見人を代理して相続放棄ができないケースには、両者が利益相反の関係にある場合があります。「利益相反」とは、お互いの法律上の利益が対立する場合のことだと考えてください。

 

利益相反関係にある場合、成年被後見人の権利が適切に守られるかといった点で不安が残るため、成年後見人は後見人の代理として相続放棄をすることはできないとされているのです。

 

たとえば、母が成年被後見人であり、その成年後見人が長男である場合で考えてみましょう。このとき、父の相続に際しては、成年被後見人である母と後見人である長男は、共同相続人です。母が相続放棄したとすると、その効果として長男の相続での取り分が増えることになります。

 

このようなケースでは、成年後見人である長男が代理をして母の相続放棄をさせることは通常認められません。

 

この場合には、この相続放棄に関してのみ、認知症である母を代理する「特別代理人」を新たに選任し、その特別代理人が代理で相続放棄の手続きをすることになります。特別代理人は、共同相続人などの利害関係人の申立てにより、家庭裁判所が選任します。

 

なお、特別代理人が選任されたからといって、その特別代理人が好き勝手に手続きができるわけではありません。たとえば、他の相続人が財産を独り占めする目的で相続放棄をさせるといったような、成年被後見人である母の権利を一方的に害する手続きは認められません。

 

特別代理人は、たとえば、遺産分割協議の代理のみなど、限られた手続きのための代理人ですので、特別代理人の選任に際し、裁判所に遺産分割協議書の案文の提出などを求められ、成年被後見人にとって不利な遺産分割協議となっていないか確認されることが多いです。

 

■成年後見人による相続放棄が認められる場合

 

一方で、成年後見人による相続放棄が認められるのは、お互いの利益が相反しない場合です。たとえば、そもそも成年後見人と成年被後見人が共同相続人でなければ問題ないでしょう。

 

他にも、仮に成年被後見人と成年後見人が共同相続人であったとしても、成年後見人を監督する立場である後見監督人が選任されている場合は、この後見監督人が代わりに相続放棄をすることができるとされています。

 

また、成年後見人と成年被後見人が元々は共同相続人であったとしても、成年後見人が成年被後見人に先立って相続放棄をしたような場合や、同時に相続放棄をする場合には、代理での相続放棄が認められるとされています。この場合には、もはや両者は利益相反の関係にはないと考えられるためです。

 

たとえば、父の相続に際し、成年後見人である長男がまず相続放棄をした後に、成年被後見人である母を代理して相続放棄をするような場合や、長男と母が同時に相続放棄をするような場合を想定してください。この場合、特別代理人の選任などをすることなく、成年後見人である長男が、母の相続放棄を代理して行うことが可能です。

 

■まとめ

 

被相続人の多額の借金を引き継がないように、認知症の相続人に相続放棄をさせるためには、まず成年後見人を選任し、成年後見人は相続放棄の手続きをするようにしましょう。

 

成年後見人が共同相続人である場合などは利益相反関係にないかどうか、特別代理人の選任が必要かどうかについて、確認検討する必要がありますので、専門家に相談されることをお勧めします。

 

 

堅田 勇気

Authense法律事務所 弁護士

 

 

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