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MR人口がどんどん減少…「MRサバイバル時代」突入か
数年前から、「MRサバイバル時代」の到来が囁(ささや)かれてきました。それが、今回のコロナ禍において医療機関への訪問もほとんどできなくなり、一気に現実味を帯びてきた感があります。
そもそもMRの人数自体、減少傾向にあります。MR認定センターの『2021年版MR白書』によると、2020年度(21年3月31日時点)の国内のMR数は5万3586人で、前年度から3572人、6.7%の減少となりました。
しかも、ピークであった2013年度(6万5752人)から7年連続の減少で、減少幅は過去最大。減少のペースが加速しているのです(図表1)。
■業績好調でも「希望退職者」募集、新規採用も抑制…MRが減っている背景
MRが減っている直接的な理由としては、多くの製薬企業が希望退職の募集に踏み切り、それと同時に新規採用を抑制していることがあります。
通常、希望退職を行うのは業績が悪化した企業というイメージがありますが、医薬品業界では業績がまだ好調であっても、希望退職の募集を行うケースが目立ちます。
その背景にあるのは、国内市場の先行きに対する危機感です。
現在、国内の医療用医薬品は年間約10兆円の市場規模があります。しかし、人口の高齢化などで膨らみ続ける医療費を抑えるため、国では2年に1度の薬価改定で長年、引き下げ(マイナス改定)を続けてきています。しかも、2021年度からは薬価改定が毎年行われるようになり、今後、国内の医療用医薬品市場の伸びはあまり期待できないか、むしろ縮小していく可能性もあります。そこで、製薬企業各社は将来を見据えて、固定費の多くを占める人件費を圧縮すべく、MRの数を減らしているのです。
生き残れるのは「専門的でハイレベルなMR」
■今後も「MRの必要性」はなくならないが…
医療用医薬品は一般用医薬品に比べてはるかに効き目が強く、慎重に使用することが欠かせません。そのため専門的な情報を医療現場に届け、また処方の結果などについての情報を収集するというMRの役割がなくなることはあり得ません。医師や薬剤師からMRを必要とする声は、コロナ禍でも多く聞かれたといいます。
ただ、これまでのように足しげく医療機関に通い、面会頻度を競うような活動スタイルは見直しが進む可能性が高いです。オンラインなどのデジタル技術と対面でのリアルコミュニケーションを組み合わせた、ハイブリッドな活動スタイルがこれからは主流になっていくと思われます。
また、医療現場でのニーズが高まっているのが、これまで十分な治療法がなかったような疾患に対する新しい医薬品です。特にがんや中枢神経系、自己免疫疾患などの分野では新薬の登場が期待され、市場全体の売上が頭打ちになるなかでもこうした分野の医薬品は売上を大きく伸ばしています(図表2)。
ただ、こうした新しい医薬品を担当するMRには高度な専門性が求められます。対象となる疾患についての知識とともに、最新の研究動向などにも目配りしてドクターとディスカッションできるくらいのレベルが必要とされるのです。
このように、「MRサバイバル時代」においても活躍できるMRには、普段からの情報収集や自己研鑽が欠かせません。医薬品による治療(薬物治療)のパートナーとして、本物のMRが求められる時代が来ているともいえます。