前回は、定年後の「私的年金」を目的とした不動産投資の例を紹介しました。今回は、東京在住のD氏が利回りの良い関西地方の物件に投資して成功した事例を見ていきましょう。

価格が高い首都圏の物件は借入での投資には不向き?

<プロフィール>

会社員(一部上場企業)D氏

39歳・男性

東京都 23区在住

 

<不動産投資を始めるきっかけ・経緯>

これまであまり投資には興味がなかったD氏でしたが、会社の同僚より新築区分マンションの投資をすすめられたことがきっかけで勉強を始められました。ところが、新築区分マンションは入居者が退去してしまえば、賃料は一気に1〜2割下がり、物件価格も同じように低下するという要因から、あまり投資には向いていないのではと思いがあったそうです。

 

一方、初期設定を誤らずに物件を購入してきちんと運用ができれば、いまの職業を続けながらでも賃貸経営ができると判断。マンション一棟を購入することを前提に投資を検討されていました。

 

D氏は東京都在住ということもあり、当初は東京都内や川崎、横浜周辺での物件を考えられていました。しかし首都圏は物件価格が高いため表面利回りが低く、借入での購入の場合、手残りがほとんど期待できません。メガバンク・都市銀行から借入ができれば、キャッシュフローが回りますが、自分の属性では難しいと考えられていました。

 

一方で地方都市に目を向けると、首都圏と比べて利回りが高い物件があることがわかり、学生時代に過ごした関西圏の物件を検討するため、当社に相談に来られたのです。

 

目標

年間850万円の税引き後キャッシュフロー

 

提案ポートフォリオ

[投資総額]4億円

1棟目 1億5000万円

2棟目 1億5000万円

3棟目 1億円

※その他、減価償却資産の組み込みも必要

 

D氏は将来結婚することも考えて、年間850万円の収入を得ることを目標にしました。これは、本業の年収をベースに、D氏に万一のことがあっても、家族が生活に困らないようにとのことからの目標設定となります。この税引き後の850万円のキャッシュフローから逆算をすると、4億円程度の投資規模が必要となります。4億円の投資規模の場合、資産管理法人を立ち上げて法人での取得となります。融資の上限金額が本業の年収に縛られなくなることと、税金面で優れているからです。

 

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アパートローンを利用し、京都市内のマンションを購入

サラリーマンとしての属性を利用し、1棟目は法人への融資もしてくれるアパートローンを活用した1億5000万円の物件を提案。2棟目以降は、地方銀行や信用金庫からの融資を受けて目標投資額を達成することをおすすめしています。一定規模以上になれば、減価償却目的で木造アパートを購入し、税の繰り延べを行うことで、手持ちキャッシュを厚くすることで、安定経営を目指すことができます。

 

物件購入(1棟目)

[データ]京都市内築22年RC造一棟マンション

[金額]1億5000万円(うちアパートローン1億4500万円:返済期間25年、金利1.975%)

[表面利回り]8.7%

[FCR(ネット利回り)]6.9%

 

関西圏で探した結果、京都市中心部の物件をご紹介することになりました。本物件は不動産ポートフォリオ上、基幹物件の位置付けで長期保有の方針です。D氏には、購入と同時に大規模な修繕を提案、筆者の会社の提携銀行を活用することで、修繕費用も含めて融資を受けることができました。結果、C氏は税引き前の年間キャッシュフロー280万円を得ることができたのです。
 

今回、東京在住の方が遠く離れた京都市で、物件を取得することができましたが、通常融資エリアは居住地に縛られるため遠方への投資は容易ではありません。居住地から離れたエリアの物件を購入しようとする場合、サラリーマンの方であればアパートローンを利用すると良いでしょう。D氏のケースでは、今後の規模拡大を考慮して法人名義でも融資可能なアパートローンを利用しました。

 

アパートローンを利用しないで、居住地から離れた場所の物件を購入する場合は、購入者の属性にもよりますが、メガバンクや都市銀行、居住地と購入希望エリアの両方に支店を持つ地方銀行から融資を受ける方法があります。

 

今後の展開

念願が叶い、一棟マンションのオーナーとなったD氏は、まず1年間運用してから法人決算を行い、その実績をもとに2棟目以降の取得に向けて動いていきたいとのことです。2棟目は関西圏にこだわらず、関東圏の物件も含め広域で検討されています。

 

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本連載は、2014年11月4日刊行の書籍『はじめての不動産投資 成功の法則』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。※事例は実例を紹介していますが一部編集しています。また、理解することに重きを置くために数値を簡略化しております。不動産取得や売却に係る諸経費は考慮していません。税金計算についてもが、概算値を採用しています。

はじめての不動産投資成功の法則

はじめての不動産投資成功の法則

藤原 正明

幻冬舎メディアコンサルティング

東京五輪による地価上昇の影響もあり、注目を集めている不動産投資。 しかし、実際に投資をはじめようとしてもはじめての人には分からないことだらけでなかなか手が出ない、ローリスクと聞いて始めてみたけれど、成功というに…

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