(写真はイメージです/PIXTA)

本記事では、ニッセイ基礎研究所の前山裕亮氏が外国株式ファンドやESG関連ファンドなどに着目しながら2021年12月の投信動向を振り返ります。 ※本記事は、ニッセイ基礎研究所の日本経済に関するレポートを転載したものです。

名ばかり問題が影を落とすESG関連ファンド

2021年は前述した3つの特徴の外国株式ファンドが売れに売れていたため、テーマ型も売れてはいたものの相対的に目立たなかった。それでも、定番のハイテク系のテーマ型ファンドは、米金融政策の動向をにらんで2021年後半は特に投資を見合わせる、もしくは売却に動く投資家もいたと思われる。

 

また、2020年7月頃から人気を集めていたESGやSDGsに注目したESG関連ファンドも2021年前半は2020年を上回る資金流入があったが、年後半はやや一服した様子である。

 

外国株式のESG関連ファンドには、2021年4月から7月にかけて新設ファンド(紺棒)が人気を集めたこともあり、4カ月連続で2,000億円を超える資金流入があった【図表4】。

 

その後8月以降は1,000億円以上の資金流入が続いてはいるが、7月までと比べて明らかに減少したことが分かる。また、ESG関連ファンド自体は2021年を通じて毎月新規に設定されていたが、8月以降は設定当月に大規模な資金流入があったファンドはなかった。

 

2021年は一貫して外国株式ファンドが売れ続けていた割には、7月までのESG関連ファンドの販売の勢いが8月以降は続かなかった。

 

[図表4]外国株式のESG関連ファンドの資金流出入と純資産総額
[図表4]外国株式のESG関連ファンドの資金流出入と純資産総額

 

このようにESG関連ファンドの販売の勢いがやや鈍化したのは、ESGインテグレーションを行っているESG関連ファンドなどで「名ばかりESG」なのではという批判が出てきたことが影響していると思われる。

 

実態を厳しく見ようとする意見が出たことによって、2021年後半はESGインテグレーションを謳うファンドをESG関連ファンドとして積極的に販売促進しにくくなったのかもしれない。

 

実際に足元でも資金流入が大きいESG関連ファンドは、「脱炭素・カーボンニュートラル」といった分かりやすいテーマ型のファンドばかりである。

 

その一方で、2020年からのESGブームの火付け役であり、純資産総額が1兆円超えている代表的なESGインテグレーションのファンドでもある「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」は2021年12月に60億円と金額自体は少額であるが、設定来初めて資金流出に転じている。

 

そもそもESGインテグレーションとは、ESGも考慮して銘柄選択を行っているESG投資の代表的な投資手法の一つである。ESG面での評価がどんなに高い企業でも、その他の要因によって今後の株価上昇が見込めない場合はファンドへの組入を見送ることも往々にしてある。

 

つまり、ESGインテグレーションを行っているファンドだからといって、必ずしもESG面での評価が高い企業ばかりがファンドに組入れられているとは限らない。また、一言にESGといっても環境、社会、ガバナンスと大きく3つの要素があるが、ファンドごとにESGの何をどのように評価するかも千差万別だと思われる。

 

ゆえに、ESGインテグレーションを行っているファンドを組入銘柄などから判断し、直ちに「名ばかりESG」と指摘することは単純すぎるように思う。

 

ただし、ESGインテグレーションはあくまでも通常のアクティブ・ファンドの銘柄選択の中にESG面の評価も組み込んだ形であり、多くの個人投資家が抱くESGに特化しているというESG関連ファンドのイメージとは大きな乖離があるかもしれない。

 

そのため2022年は、ESG関連ファンドの販売動向と合わせて、運用会社や販売会社等がESG投資やESG関連ファンドに対する個人投資家の理解をどう深めるかについても注目したい。

好調がゆえに売却される外国REIT

12月に高パフォーマンスであったファンドをみると、これまで低迷していたトルコ・リラやメキシコ・ペソが反発・上昇したため、それらの通貨選択型のファンド(赤太字)が好調であった【図表5】。

 

[図表5]2021年12月の高パフォーマンス・ランキング
[図表5]2021年12月の高パフォーマンス・ランキング

 

また、2021年を通してみると一部のハイテク系のテーマ型の外国株式ファンド(赤太字)や資源高を受けてエネルギー関連ファンド(青太字)が好調であった【図表6】。

 

それに加えて外国REITファンド(緑太字)も総じて好調であった。外国REITは値上がりして利益確定の売却が出やすくなっていることもあり、2021年を通じて、正確にはそれ以前の2020年10月以降、資金流出が続いている。

 

[図表6]2021年の高パフォーマンス・ランキング
[図表6]2021年の高パフォーマンス・ランキング

 

 

前山 裕亮

ニッセイ基礎研究所

 

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本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年1月13日に公開したレポートを転載したものです。

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