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注目セクター①…通信
アウトパフォームというのは、そのセクターがインデックスや市場平均よりも良い成績を上げることを期待されているということです。そして、ニュートラルというのは、市場平均と同じようなパフォーマンス、そしてアンダーパフォームは、市場平均よりも悪いパフォーマンスが見込まれるということです。
アウトパフォームセクターとしては、通信が引き続き好調で、港湾、電力、鉱業の各セクターが期待されます。アンダーパフォームのセクターは、不動産、ショッピングモール、航空会社など、オミクロンの悪影響が残りそうな業界です。
通信分野では、ブロードバンドサービスの需要が継続的に見込まれます。フィリピンに新しい感染症の波が押し寄せているわけですから、在宅勤務やフレックス勤務は、おそらく今年の半ばか第3四半期まで継続されます。
ブローバンド普及率は、国全体で63%に過ぎません。マニラ中心部(NCR: National Capital Region)で84%、ルソン島全体では65%です。セブ島で62%、ミンダナオ島は47%にすぎません。つまりブロードバンドサービスの伸びしろが大きいということです。
もう一つ大きく伸びているのが、デジタル決済サービスです。Globe Telecom(GLOB)はG-cashというアプリを提供し、PLDT社はペイマイヤというアプリを展開しています。
このセクターでは、高配当割安銘柄として、PLDT(TEL)があります。2022年のPERは14.5倍、2023年は13.9倍です。過去10年間のPERが14倍から18倍の間ですので、割安と言えます。また、来年の予想配当利回りは4.7%と、かなり良い水準にあります。
また、ブロードバンド通信専業のコンバージ(CNVRG)は、2021年のPERは32.5倍で、高めですが、2023年までこの数値が下がっていく予想です。今年は一株あたり利益(EPS)が50%近く伸び、2023年には35%程度伸びると予想されています。そうすると、2022年のPERは22.4倍、2023年は17.3倍と、よりリーズナブルになります。
同社の投下資本利益率(ROIC)は、22%と競合のPLDTとGlobeの約2倍です。PLDTは11%で、Globeは10%程度です。Convergeの投下資本利益率は非常に高いのです。これは、CNVRGが携帯よりも利益率の高いブロードバンドサービス専業であるということと、まだ配当を出していないことが要因です。
注目セクター②…港湾運営事業
次の分野は港湾運営事業です。世界的な貿易量の回復で、世界中の港は満杯で船が停泊できない状態です。フィリピンには、港湾事業に携わる上場企業が1社しかありません。インターナショナル・コンテナ・ターミナル・サービス社(ICTSI)です。この会社は、フィリピンで最もグローバルな企業であり、20ヵ国で34の港湾を運営しています。ICTが操業していない大陸は南極大陸だけです。
2022年のPERは22.5倍、2023年は18.1倍です。フィリピンの市場平均と比べるとかなり割高ですが、グローバル企業であること、フィリピンで唯一の港湾会社であること、競合のグローバルな港湾運営会社のPERが18から23倍ということを勘案すると、このバリュエーションが正当化できるのではないでしょうか。さらに2022 年と 2023 年に運営する港の容量を拡大する計画もあるようです。
注目セクター③…ユーティリティセクター
次は、ディフェンシブセクターの代表であるユーティリティセクターです。Manila Electric Company(通称メラルコ MER)とManila Water Company, Inc. (MWC)という2つの大きな会社です。両社は安定した収益と配当金を出しています。そして両社のPERは安定して15倍前後です。
過去3年間のメラルコの平均配当利回りは4.6%です。メラルコの主な事業は配電で、マニラ首都圏とその周辺地域に配電しています。しかし、同社が拡大しようとしているのは、子会社のメラルコ・パワー・ジェンの発電事業です。
マニラウォーターは、最近、25年間の政府とのコンセッション契約を更新しました。また、サウジアラビアやフィリピンの他の地域にも事業拡大しています。配当率は2~3%程度でメラルコほど高くはありませんがまずまずの水準です。マニラウォーターのオーナーは、前述のICTSIと同じEnrique Razon氏です。彼はICTSIで実績を示している通り、グローバルな事業展開を得意としています。また、カジノ会社ブルームベリーの経営も行なっています。