写真:PIXTA

アフターコロナを見据えた動きが予測さえる、2022年のフィリピン株式市場。一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、今年注目すべき「アウトパフォームセクター」について解説します。

注目セクター④…エネルギー・発電

次のアウトパフォームセクターは、エネルギー・発電です。フィリピンでは経済発展に伴って大きな電力需要があるにもかかわらず、供給が充分でなく電力不足が慢性化しています。これは主に、マランパヤに埋蔵されている天然ガスが枯渇し始めているためです。そのため、天然ガス発電所は時々停止せざるを得なくなります。同時に、政府は石炭やディーゼルといった化石燃料を段階的に削減しようとしています。ですから、その点でも供給不足気味です。非常にM&Aや資本提携の動きが活発な分野でもあります。

 

昨年は、KKRのFGENへの投資(17%)、日本のJERAのAboitiz Powerへの出資(25%)、さらには、シンガポールの国営ファンドGICがACEに17.5%出資しています。ACENは再生可能エネルギー企業をM&Aで買収しています。このように、電力分野は買収と資本提携が非常に盛んな分野なのです。

 

フィリピンの再生可能エネルギー分野は、ACエナジー(ACEN)を筆頭に、ソーラー・フィリピン、まだ未上場の前述Enrique Razon氏の持ち株会社、その他スタートアップ企業も参入してきて、大きな飛躍的な成長を遂げていきそうです。

 

フィリピン最大企業の一つであるサンミゲル社も、同社が開発するブラカン州の空港に太陽光発電所を建設しようとしています。

 

Aboitiz Power Corp. (AP) は2022年のPERが10.9倍、2023年のPEは8. 4倍と非常にリーズナブルです。さらに、通常発電事業は設備投資が非常に多いため、配当が少ないのですが、同社の2022年の配当利回りは3.2%と高配当が予想されています。

 

ACENはすでに少し割高であることは周知の通りですが、2022年は40%近く、2023年にはさらに30%の成長が見込まれています。ACENはアヤラ財閥の資金力をバックにM&Aで事業を急拡大する戦略です。ACENは、再生可能エネルギーの発電容量を2025年には現在の2倍以上5000メガワットにすることを目指していて、これを実現すれば東南アジア最大の再生可能エネルギー企業となります。

注目セクター⑤ マイニングセクター

最後にマイニングセクターを見てみます。今般DENR(環境庁)は露天掘りの禁止を解除しました。環境への負荷の大きい採掘方法ですが、これによって、鉱山会社はより安価に効率よく採掘ができるようになりました。操業の面では、地下で採掘するよりも露天掘りの方がはるかに安上がりなのです。そのため、ここ数週間、一部の鉱業株が上昇しています。

 

主に2つの金属に注目しています。ニッケルは、電子自動車、携帯電話、太陽光発電のバッテリーに使用される電池の製造に高い需要があります。そして、ステンレス鋼の製造にも使用されます。2022年には、中国でのステンレス鋼の製造量が12%増加する見込みです。ステンレスは、建築用だけでなく、自動車やあらゆるものに使われています。

 

フィリピンで最大のニッケル鉱山会社はNickel Asia Corp. (NIKL)です。昨年は約1800万トンのニッケルを出荷しています。この会社のビジネスはこの2年で安定してきたと言えます。この2年間で安定した純利益を上げられるようになり、配当も増額できるようになりました。生産能力の増強と精錬所の建設にも取り組んでいます。

 

フィリピンはインドネシアに次ぐ世界第2位のニッケル生産国です。2021年の配当は予想より高かったですが、5.4%程度が今後のニッケル・アジアに期待できる配当だと思います。

 

そして、2つ目の金属は金です。金はインフレに対するヘッジになリます。銘柄としては、フィリピン最大の金鉱山会社Philex Mining Corp. (PX)です。

 

フィリピンで最も古い金鉱であるPADCAL鉱山を開発していますが、2024年までに金鉱が枯渇する予定です。この会社は、シランガン鉱山と呼ばれる新しい鉱山の開発に着手し、2025年に商業運転を開始する予定です。露天掘りの禁止が解除されれば、より早く、より安く操業を開始することができるため、この会社には大きなフォローウィンドです。

 

※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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