ASEANの貿易統計(1月号)…11月は感染改善に伴い製造業が遅れを取り戻し、輸出の伸びが加速 (写真はイメージです/PIXTA)

ASEAN主要6カ国の輸出は昨年4月に新型コロナウイルスの影響を受けて急減しましたが、商品市況の改善を受けて増加傾向が続いています。本記事はニッセイ基礎研究所の斉藤誠氏がベトナム・タイ・マレーシア・インドネシア・シンガポール・フィリピンの輸出について分析し、解説します。 ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が公開した東南アジアの経済予想に関するレポートを転載したものです。

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11月は感染改善に伴い製造業が遅れを取り戻し、輸出の伸びが加速

21年11月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て、通関ベース)は前年同月比29.1%増となり、前月の同20.4%増から上昇した(図表1)。輸出は昨年4月に新型コロナウイルスの世界的な感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響が本格化して急減した後、経済活動の再開やテレワーク需要の増加に伴う電気・電子製品の出荷増、商品市況の改善を受けて増加傾向が続いている。11月は域内の感染状況の改善が続いて経済活動の再開が進むなかで輸出の伸びが加速、また国際商品市況の上昇によりインドネシアやマレーシアを中心に資源輸出が引き続き好調だった。

 

ASEAN6カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、11月は東南アジア向け(同39.2%増)が好調だった。前年の水準が低かったことや、今夏の感染再拡大に伴う活動制限措置が解除されていったことにより高い伸び率となった。このほか、東アジア向け(同25.0%増)と北米向け(同27.9%増)、EU向け(同35.9%増)も伸びが加速した。

 

[図表1]アセアン主要6カ国の輸出額/[図表2]アセアン主要6カ国仕向け地別の輸出動向
[図表1]アセアン主要6カ国の輸出額
[図表2]アセアン主要6カ国仕向け地別の輸出動向

 

ベトナムの21年11月の輸出額(通関ベース)は前年同月比26.3%増(前月:同6.1%増)の318億ドルと伸びが加速した(図表3)。輸出の基調は昨年4~5月に新型コロナ感染対策として国内外で実施された活動制限措置の影響を受けて一時的に落ち込んだ後、世界的な経済活動の再開や電子機器需要の拡大により伸びが加速、その後も高水準で推移している。また輸入額も前年同月比24.1%増(前月:同7.8%増)の306億ドルとなり伸びが加速した。結果として、貿易収支が+12.6億ドルの黒字となり、前月から14.8億ドル悪化した。

 

輸出を品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が前年同月比21.5%増(前月:同3.1%増)、電気製品・同部品が同20.6%増(前月:同0.7%減)と急上昇した(図表4)。またアパレル関連では、履物が同3.9%増(前月:同33.0%減)とプラスに転じたほか、織物・衣類が同35.8%増(前月:同3.2%増)と大きく上昇した。農林水産物を見ると、水産物(同2.9%減)こそ減少したものの、コメ(同56.9%増)やコーヒー(同49.9%増)、カシューナッツ(同16.2%増)、天然ゴム(同7.9%増)などが好調を続けた。

 

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同22.3%増(前月:同2.9%増)、地場企業が同38.2%増(前月:同15.3%増)と、それぞれ伸びが加速した。

 [図表3]ベトナムの貿易収支/[図表4]ベトナム輸出の伸び率(品目別)
[図表3]ベトナムの貿易収支
[図表4]ベトナム輸出の伸び率(品目別)

 

タイの21年11月の輸出額(通関ベース)は前年同月比24.7%増(前月:同17.3%増)の236億ドルとなり、好調が続いた(図表5)。輸出の基調は新型コロナ感染拡大の影響が直撃した昨年4~6月に大きく減少した後、世界的な電子機器の需要増加、国際商品市況の上昇などから増加傾向が続いている。また輸入額も前年同月比20.5%増(前月:同34.6%増)の226億ドルとなり、大幅な増加が続いた。結果として、貿易収支が+10.2億ドルの黒字となり、前月から13.9億ドル改善した。

 

輸出を品目別に見ると、全体の約7割を占める工業製品が同23.6%増(前月:同15.0%増)と9カ月連続の二桁増となった(図表6)。製造品の内訳を見ると、在宅時間が増加した影響で電子機器(同18.9%増)や家電製品(同14.4%増)が堅調に拡大、また機械・装置(同11.0%増)や石油化学製品(同64.1%増)、自動車・部品(同14.7%増)などの主要輸出品も引き続き増加した。また鉱業・燃料は同113.8%増(前月:同127.2%増)となり、石油製品(同141.9%増)を中心に大幅な増加が続いた。このほか、農産物・同加工品は同13.5%増(前月:同12.2%増)と好調が続いている。ゴム製品(同14.5%減)が減少したものの、コメ(同8.7%減)が減少したものの、天然ゴム(同23.5%増)と果物(同53.3%増)と加工食品(同18.6%増)は二桁成長を続けるなど、総じて増加した品目が多かった。

 

[図表5]タイの貿易収支/[図表6]タイ輸出の伸び率(品目別)
[図表5]タイの貿易収支
[図表6]タイ輸出の伸び率(品目別)

 

マレーシアの21年11月の輸出額(通関ベース、ドル換算)の伸び率は前年同月比30.5%増(前月:同25.1%増)の268億ドルとなり好調だった(図表7)。輸出の基調は昨年4~5月に新型コロナ感染拡大と国内外の活動制限措置の影響が本格化して約3割の減少を記録した後、世界経済の回復や商品市況の高騰、電気電子製品の需要拡大を追い風に増加傾向が続いている。また輸入額も前年同月比36.0%増(前月:同27.5%増)の223億ドルとなり伸びが加速した。結果として、貿易収支が+45.3億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から17.9億ドル縮小した。

 

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同17.6%増(前月:同10.0%増)となり、主力の電気・電子製品(同15.7%増)を中心に4カ月連続で増加した(図表8)。また鉱物性燃料は同82.9%増(前月:同10.7.8%増)と好調を維持した。石油製品(同137.4%増)と天然ガス(同96.6%増)の大幅な増加が続いたが、原油(同14.6%減)が減少した。このほか、化学製品(同49.0%増)、動植物性油脂(同92.8%増)の二桁増が続いた一方、ゴム手袋(同3.2%減)は昨年好調だった反動で減少した。

 

[図表7]マレーシア貿易収支/[図表8]マレーシア輸出の伸び率(品目別)
[図表7]マレーシア貿易収支
[図表8]マレーシア輸出の伸び率(品目別)

 

インドネシアの21年11月の輸出額(通関ベース)は前年同月比49.7%増(前月:同53.4%増)の228億ドルとなり、大幅な増加が続いた(図表9)。輸出の基調は昨年3~5月にかけて新型コロナの感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響を受けて最大約3割減まで落ち込んだ後、経済活動の再開や国際商品市況の上昇により増加傾向が続いている。また輸入額も前年同月比52.6%増(前月:同51.1%増)の193億ドルとなり、大きく増加した。結果として、貿易収支が+35.2億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から22.2億ドル縮小した。

 

全体の9割を占める非石油ガス輸出が同48.4%増(前月:同52.8%増)、石油ガス輸出が同74.8%増(前月:同66.8%増)となり、それぞれ好調を維持した(図表10)。品目別にみると、鉱産物(同120.5%増)や鉄・鉄鋼(同56.5%増)、電気機械(同22.3%増)、機械類(同10.7%増)、動植物性油脂(同8.3%増)、自動車・同部品(同5.8%増)などが増加したほか、天然又は養殖真珠、貴石、半貴石(同68.1%増)とゴム製品(同22.4%増)が増加に転じた。

 

 [図表9]インドネシア貿易収支/[図表10]インドネシア輸出の伸び率(品目別)

[図表9]インドネシア貿易収支
[図表10]インドネシア輸出の伸び率(品目別)

 

シンガポールの21年11月の輸出額(石油と再輸出除く、通関ベース、ドル換算)は前年同月比23.4%増(前月:同18.6%増)の124億ドルとなり、伸びが加速した(図表11)。輸出は昨年コロナ禍でも増加傾向で推移し、今年は世界的な電子製品の需要拡大や石油製品の価格上昇により総じて好調が続いている。なお、総輸出額が同30.4%増(前月:同23.4%増)の419億ドル、総輸入額が同31.0%増(前月:同26.4%増)の374億ドルと、それぞれ増加した。結果として、貿易収支が+45.0億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から0.2億ドル縮小した。

 

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約2割を占める電子製品は同28.3%増(前月:同15.7%増)と好調を維持して12カ月連続の二桁増となった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、主力のIC(同40.9%増)やPC(同53.2%増)、ダイオード・トランジスタ(同27.9%増)の大幅な増加が続いたほか、ディスクメディア(同18.6%増)が2カ月ぶりの増加に転じた。また全体の約3割を占める化学品は同36.0%増(前月:同16.7%増)と好調を維持した。化学品の内訳を見ると、医薬品(同19.7%増)と石油化学製品(同64.9%増)は伸びが加速した。

 

[図表11]シンガポール貿易収支/[図表12]シンガポール輸出の伸び率(品目別)
[図表11]シンガポール貿易収支
[図表12]シンガポール輸出の伸び率(品目別)

 

フィリピンの21年11月の輸出額(通関ベース)は前年同月比6.6%増(前月:同2.0%増)の62億ドルとなり、伸びが加速した(図表13)。輸出は昨年3月に新型コロナ感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響が現れて急減した後、世界経済の再開を受けて増加傾向が続いているが、足もとでは主力の電子部品の輸出が鈍化して伸び悩みつつある。また輸入額は前年同月比36.8%増(前月:同25.1%増)の109億ドルとなり好調だった。結果として、貿易収支が▲47.1億ドルの赤字となり、赤字幅は前月から6.9億ドル拡大した。

 

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の6割弱を占める電子製品が同5.6%増(前月:同1.7%増)と加速した(図表14)。電子製品の内訳を見ると、電子データ処理機(同4.3%増)の伸びが鈍化したものの、主力の半導体デバイス(同3.7%増)がプラスに転じた。その他9品目については、ココナッツオイル(同95.0%増)や電子機器・部品(同33.9%増)、化学品(同31.8%増)、その他製造品(同15.1%増)、その他鉱物製品(同5.7%増)がそれぞれ増加した一方、イグニッションワイヤーセット(同19.5%減)、機械・輸送用機器(同17.4%減)、金属部品(同10.9%減)、製錬銅(同4.5%減)が減少した。

 

[図表13]フィリピンの貿易収支/[図表14]フィリピン 輸出の伸び率(品目別)
[図表13]フィリピンの貿易収支
[図表14]フィリピン 輸出の伸び率(品目別)

 

 

斉藤 誠

ニッセイ基礎研究所

 

 

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ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員

【職歴】
 2008年 日本生命保険相互会社入社
 2012年 ニッセイ基礎研究所へ
 2014年 アジア新興国の経済調査を担当
 2018年8月より現職

著者紹介

連載ニッセイ基礎研究所レポート・インサイト

本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年1月11日に公開したレポートを転載したものです。

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