(写真はイメージです/PIXTA)

今年の10月、後期高齢者の医療負担に関する制度が改定され、所得によって負担割合が変化します。この制度改正はなぜ施行されるに至ったのでしょうか。本記事では、ニッセイ基礎研究所の三原岳氏が、高齢者の医療負担について過去の制度を紐解きながら解説します。 ※本記事は、ニッセイ基礎研究所の医療保険制度に関するレポートを転載したものです。

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    はじめに~高齢者の患者負担増を考える~

    2022年がスタートしました。今年も昨年と同様、新型コロナウイルスの影響は読み切れず、不透明な展開が予想されますが、筆者の主な関心事である医療・介護関係では2年に一度の診療報酬改定などの制度改正が予定されています。

     

    さらに、75歳以上の高齢者に関する患者負担の引き上げが10月に予定されており、歴史を振り返ると、奇しくも2022年は70歳以上の老人医療費を無料化するための改正老人福祉法の成立から50年、さらに無料化を軌道修正した老人保健法の成立から40年という「節目」の年になります(いずれも施行は翌年)。

     

    そこで今回は「高齢者の患者負担」という切口で、今年の議論を展望するともに、今後の方向性を模索したいと思います。

    制度改正の概要

    1.現在の仕組みと改正の内容

     

    まず、高齢者の患者負担に関する現在の仕組みと10月の制度改正を概観します。現在の仕組みは年齢に応じて負担割合が変わる仕組みとなっており、65歳以上70歳未満は3割負担、70歳以上74歳未満の高齢者は原則2割となっています。

     

    さらに、本稿のターゲットである75歳以上の後期高齢者については、原則は1割負担(図表の赤い部分)、現役並み所得を得ている高齢者は3割(図表の青い部分)という仕組みであり、ここに10月実施の制度改正を通じて、2割負担の人(図表の黒い部分)が追加されます。

     

    出典:厚生労働省資料などを基に作成 注:単身世帯の年金収入ベース。
    [図表]後期高齢者の医療費に関する制度改正のイメージ 出典:厚生労働省資料などを基に作成
    注:単身世帯の年金収入ベース。

     

    そもそも、患者負担を求める方法については、医療費の一定割合を徴収する「定率負担」と一定の金額を取る「定額負担」に大別されます。一方、患者の所得に応じて負担額を決める「応能負担」と、サービス利用など受ける利益に着目する「応益負担」に分けることも可能です。

     

    この整理に従うと、後期高齢者に関しては、定率負担と応益負担が導入されている一方、所得に着目する応能負担も部分的に採用されており、10月の制度改正は応能負担の強化と位置付けられます。

     

    では、今回の制度改正はどういう経緯で進められ、何が論点になったのでしょうか、次に経緯を簡単に振り返ります。

     

    2.今回の制度改正を巡る経緯

     

    75歳以上の高齢者であっても、一定所得以上の方については、その医療費の窓口負担割合を2割とし、現役世代の負担上昇を抑えながら、全ての世代が安心できる制度を構築する――。今回の制度改正は元々、安倍晋三首相(肩書は発言当時、以下全て同じ)が2019年12月の全世代型社会保障検討会議で、こう述べたことで議論がスタートしました。

     

    しかし、高齢者の受診控えを恐れる日本医師会(日医)が「原則2割となると、(筆者注:高齢者は)貯蓄とか、費用を節約しなければならない」などと難色を示したほか、与党サイドでも慎重意見が出たことで、具体的な所得基準とか、実施時期が焦点となりました。

     

    その後、2020年9月に菅義偉政権が発足。2020年12月の与党調整では、2割負担になる所得基準の線引きが「収入200万円以上」で決まったものの、実施時期については、総選挙や参院選への影響を考慮して明記されず、「2021年下半期」と定められるにとどまりました。さらに、岸田文雄政権に代わった2021年12月の閣僚折衝で、実施時期が2022年10月と決定されました。

     

    こうした経緯を見るだけでも、3つの内閣にまたがって負担増が模索されたことが分かります。それだけ高齢者の負担増は政治的に神経質なテーマと言えます。実際、患者負担を巡って過去に様々な経緯がありました。以下、時計の針を半世紀前ほどに巻き戻し、70歳以上の老人医療費を無料にした時の判断や背景を探ります。

     

    次ページ50年前の老人医療費無料化を巡る経緯

    本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年1月12日に公開したレポートを転載したものです。

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