(※写真はイメージです/PIXTA)

2008年度以降、増加の一途をたどっていた医学部の入学定員数は、2020年度、減少に転じました。「医師過剰の時代」へ突入する日本社会ですが、地方の医師不足問題に解決の兆しは見られません。医学部の定員と「地域枠」について、医学部受験専門予備校メディカ代表の亀井孝祥氏が解説していきます。

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    10年以上、医学部の定員数は「増加」していた

    令和2年度、国公私立大81校の医学部総定員は「9330人」と、前年度の定員である9420人から90人も減少しました。その後も令和3年度は9357人、4年度は9374人と、ピーク時を下回る定員数が続いています。

     

    厚生労働省と文科省の説明によると、定員減となったことにはいくつかの要因があります。

     

    まず、都道府県が地元の医師不足解消のために設けた「地域枠入試」制度の崩壊です。卒業後、地元の医療機関で勤務することを条件に奨学金を貸与する制度ですが、過去11年間の地域枠の募集で、合計約2600人分の定員割れが発生しています。そのため、2020年度は募集・増員を希望する自治体が少なかったのです。

     

    加え、各大学が地域枠で埋まらなかった定員分を「一般枠」に振り替えていたことがわかっています。それらの状況を踏まえ、文科省は医学部の定員見直しに踏み切ったのです。

     

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    ちなみに、昔の医学部はもっと狭き門で、2007年度の入学定員は7625人でした。当時の医学部定員は、政府の閣議決定により「毎年7600人程度」という上限が設けられており、現在より2割も少なかったのです。

     

    しかし2000年代前半、各病院が医師不足に陥ったため、救急搬送の患者を受け入れられるキャパシティがなく、「救急車たらいまわし」問題が多発していました。複数の医療機関から受け入れを拒否された患者が死亡する事態も発生し、医師不足は社会問題として大きく取り上げられるようになりました。

     

    この問題を重く受け止め、政府は2006年に「新医師確保総合対策」、2007年に「緊急医師確保対策」を立ち上げ、その一環として各大学医学部の定員増員を決定しました。具体的には、2008年度より、入学定員を168人増の7793人に引き上げたのです。その後、年々増員が続きましたが、この政策は暫定10年間のもので、2018年度で終了する計画でした。

    次ページ今後数年で、日本は医師過剰の時代に突入

    本記事は、医学部受験サクセスガイド『集中メディカ』ホームページのコラムを抜粋、一部改変したものです。

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