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「地域枠」の本来あるべき姿が失われている
前述のとおり、最短で2028年に均衡するという医師数推計があり、医師過剰問題の解消に向かって議論が重ねられているようですが、その一方で、「地方の医師不足問題」は何ら解決されていません。
地方における医師不足や診療科の偏在の問題を受け、厚生労働省は「地域枠入学試験」(以下、地域枠)を導入、各自治体・大学に参画を呼びかけました。
地元出身者はもちろんのこと、他地域出身者でも、地方医療従事に意欲的な医学部志願者を対象とした奨学金制度です。医学部を卒業し医師免許を取得したあと、自治体が指定する医療機関に一定期間従事すれば、奨学金の返済が免除されます。
この地域枠の導入により、地方の医師不足が解消されるとともに、経済的な理由で医学部進学が厳しかった一般家庭からの受験者にも、希望の光が射しました。
たとえば栃木県の自治医科大学では、卒業後9年間、学生の出身県内の指定公立病院等にて勤務することを条件に学費が全額免除されます。
授業は、CTやMRIのような設備がない状況下で行う身体初見を想定した内容で、インフラの整っていないへき地における症状の診断、緊急性の判断を行える医師の育成がなされています。
学生たちの住まいは全寮制で、寮費は月額8000円程度。安価で食事がとれる食堂や勉強室なども完備されており、志高い学友とともに、医師試験へ前向きに取り組める環境が整えられています。
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しかし昨今では、地域枠の貸与資格は得たものの、修学途中で返還するケースや、地域医療に従事しても、就業期間半ばで退職してしまうケースも少なくないといいます。地域枠の奨学金は基本的に「貸付金」なので、免除要件をクリアできなければ、貸付金に利子を付けて制限期間内に返還しなければなりません。
厚生労働省が実施した「臨床研修修了者アンケート調査」によると、奨学金を途中で返還した理由として、2%強が「もともと地域医療に従事する気はなく、最初から返還する予定だった」と回答しています。
「被災地の医療に携わりたい」、「無医村で働く医師に憧れを持った」という地方医療に積極的な医学生がいる一方、「浪人した分の学費負担を軽くしたかった」という声もあり、制度本来の目的を無視する学生も少なからずいるようです。