(※写真はイメージです/PIXTA)

中小企業が安定的な利益を出すには、正確な会計業務の裏打ちが必要です。そのひとつに在庫(棚卸資産)」の管理があります。この部分があいまいだと、正確な売上が把握できず、商品が売れているのかがつかみきれないという、困った事態に陥ってしまいます。会計士が解説します。

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「棚卸資産の記録」から見える、経営改善のポイント

効果的な会計を実現するためには、「在庫」のチェックも欠かせません。会計の言葉では、在庫を「棚卸資産」と呼びますが、棚卸資産に関する基本的なルールを押さえておきましょう。

 

期首在庫 + 仕入 - 期末在庫 = 売上原価

 

「売上原価」は、粗利を計算するときに使う数値です。商品が売れたとして、その売れた商品の仕入値が売上原価になります。もし商品に売れ残りがあれば、「棚卸資産」として翌期に引き継ぎます。

 

例えば、月初の時点で在庫が100万円分残っていたとします。その後、追加で300万円分の仕入れをして、月末に200万円分の在庫が残っていたのであれば、売上原価は次のように計算されます。

 

期首棚卸資産100万円 + 当期仕入300万円 - 期末棚卸資産200万円

=売上原価200万円

 

そして、その月に売上が1000万円あったとして、粗利を計算してみましょう。

 

売上高1000万円 - 売上原価200万円 = 売上総利益(粗利)800万円

 

このように考えないと、「今月の仕入れは300万円だったから、粗利は1000万円との差額の700万円」という勘違いをしてしまいます。

 

会計のルールには、「売上に紐づく費用は、売上と合わせて計上する」という考えがあり、「費用収益対応の原則」と呼ばれています。右の計算式は、この費用収益対応の原則によるものですが、このような計算をすることで、「売れた商品に、いくらコストがかかって、いくらの利益が出たのか」ということを正確に把握することができます。

 

売上原価を正しく計算するには、在庫をきちんと管理しておく必要があります。どの商品を、いつ、いくらで、何個仕入れたのかをその都度記録するとともに、在庫の紛失や故障、品質劣化などはないかを定期的に確認してください。このような作業を「実地棚卸」といいます。

 

実地棚卸を上手にするには、会計ソフトや在庫管理ソフトを使って仕入や販売を記録するとともに、在庫をきれいに整理することが大切です。

定期確認で「売れている・売れていない」が見えてくる

こうした作業を雑に行ってしまうと、さまざまな問題が起きてしまいます。例えば、在庫の紛失があっても、すぐに気づくことができません。本来、棚卸資産の紛失や劣化があれば、損失を計上することになります。これを怠ると、実際以上に利益が多く算出され、間違った業績把握になるのです。

 

また、売れない商品や使えない材料などを放置していると、保管スペースや維持コストが無駄になります。いずれ、新しい商品を仕入れるスペースが足りず、慌てて実地棚卸をする羽目になりますが、まとめて整理をするのは大変です。

 

顧客から注文が入り、その商品が在庫として残っているはずなのに、見つけられないということもあり得ます。注文に対応するために、急いで商品を仕入れることになり、余分なコストがかかってしまいます。

 

このようなことを繰り返していたら、利益が出るはずがありません。

 

私がこれまで関与してきた優良企業では、例外なく在庫がきれいに管理されていました。定期的な実地棚卸が行われていて、在庫不足を起こしたり、保管スペースが足りなくなったりすることはありません。

 

さらに、在庫を定期的に確認していれば、「売れている商品」と「売れていない商品」が自然と見えてきます。社長が「これは売れる」と自信を持って仕入れた商品が、まったく売れていないという事実を正確に把握することができます。

 

 

小形 剛央
税理士法人小形会計事務所 所長
株式会社サウンドパートナーズ 代表
税理士・公認会計士

 

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本記事は『たった3か月で売上高倍増!これだけは知っておくべき社長の会計学』(幻冬舎MC)より抜粋・再編集したものです。

たった3か月で売上高倍増!これだけは知っておくべき社長の会計学

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小形 剛央

幻冬舎MC

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