イラスト:キタ大介
4年落ちの高級外車購入…節税面は有益だが、注意点も
2020年6月30日掲載の記事『社長唖然…商品券を大量購入しても「節税」にならない根本理由』では、「お金がなくなる節税」の7つの具体的活用事例として、「①購入商品の経費性」「②『消耗品』に関する節税の特例」「③減価償却」について解説したが、本記事ではその続きを見ていこう。
④「4年落ちの高級外車」の事例から「定率法償却率」を説明
中小企業経営者からよく聞かれるのが「4年落ちの高級外車を買えば、節税ができておトクなのか?」という質問。これについての答えは、節税に限って言えばYesだ。しかし、注意すべき点がたくさんあるので、解説しよう。
期首(事業年度の初日)に車を買って事業供用した場合、初年度の減価償却費の金額について、3パターンをシミュレーションした(図表1)。
車体価格はいずれも500万円として、Ⓐ新車で購入した場合、Ⓑ3年落ちの中古車を購入した場合、Ⓒ4年落ち以上の中古車を購入した場合で、それぞれ減価償却費を定率法により計算した。
結果は一目瞭然! Ⓐは通常通りの償却で初年度償却費として経費に計上できるのは1,665,000円。一方、ⒷやⒸの場合は中古資産であるため、税務上の耐用年数が短縮されるのだ。それぞれ3年、2年での償却計算となる。Ⓑの償却費は3,335,000円であり、Ⓒはなんと5,000,000円! 全額が計上可能なのだ。
このカラクリは、法定耐用年数に基づく定率法償却率にある。耐用年数6年の場合、定率法償却率は0.333である。対して、耐用年数2年の場合、定率法償却率は1.000となるのだ。
そう。つまり、100%全額償却が可能になる(なお、年度の途中での購入の場合、月割計算が必要となる)。
以上のように、新車で購入するよりは中古車を購入した方が、初年度での節税効果が圧倒的に有利になる。
しかし、強調しておきたいのは、トクになるのはあくまでも税務面、それも「購入初年度の節税だけ」を考えたときだけ有利になる点だ。下記のように「トータルコスト」も考慮に入れるべきだろう。
●初年度の償却費には大きな差があるが、結局経費に落ちる総額は、ⒶもⒷもⒸもトータル500万円
●年数落ちが進んだ車であればあるほど、購入後に多額の修理費用が発生する可能性が高くなる
ひとり会社に限らず、会社経営は、決して「節税が全て」ではない。皆さんの目的は、円滑にひとり会社を経営して、利益を獲得すること。その円滑な経営に必要そうであれば、節税対策を検討する。順序を間違えてはいけない。
もしあなたがボロボロの中古車を買って、その後に修理コストが発生した場合、当然ながらそれは経費となる。節税は可能だが、キャッシュは減る。どちらが良いのか、は言うまでもないだろう。
ちなみに、購入ではなくリースの場合、支払ったリース料が経費に落ちる。シンプルでわかりやすい。しかしながら、リース料には金利や税金が含まれるため、トータルのコストは高くなることを覚えておこう。
なお、車購入の際、融資を活用することも多いだろう。自動車ディーラーのオートローンを使う人も多いが、一般的に金利が高いものが多く、あまりオススメできない。それなら、メインバンクに相談しよう。一般の設備投資資金として、銀行等からさらに低利で融資を受けることも可能だ。金利コストを削減できる可能性が高いので、オススメする。