経営者にとって「節税」は最も重要な課題のひとつです。しかし実際には「税金弱者」ともいうべき、税知識に乏しい経営者も少なくありません。ここでは、税理士YouTuberとして多くの節税動画を公開している田淵宏明氏が、中小企業経営者やひとり社長に向けた節税の基本を解説します。※本記事は『日本一わかりやすいひとり社長の節税』(ぱる出版刊行)より抜粋・再編集したものです。

イラスト:キタ大介

4年落ちの高級外車購入…節税面は有益だが、注意点も

2020年6月30日掲載の記事『社長唖然…商品券を大量購入しても「節税」にならない根本理由』では、「お金がなくなる節税」の7つの具体的活用事例として、「①購入商品の経費性」「②『消耗品』に関する節税の特例」「③減価償却」について解説したが、本記事ではその続きを見ていこう。

 

④「4年落ちの高級外車」の事例から「定率法償却率」を説明

 

中小企業経営者からよく聞かれるのが「4年落ちの高級外車を買えば、節税ができておトクなのか?」という質問。これについての答えは、節税に限って言えばYesだ。しかし、注意すべき点がたくさんあるので、解説しよう。

 

期首(事業年度の初日)に車を買って事業供用した場合、初年度の減価償却費の金額について、3パターンをシミュレーションした(図表1)。

 

※上記例は期首月に購入したケースであり、それ以外の場合は月数按分する必要あり。
[図表1]中古の固定資産の購入 ※上記例は期首月に購入したケースであり、それ以外の場合は月数按分する必要あり。

 

車体価格はいずれも500万円として、Ⓐ新車で購入した場合、Ⓑ3年落ちの中古車を購入した場合、Ⓒ4年落ち以上の中古車を購入した場合で、それぞれ減価償却費を定率法により計算した。

 

結果は一目瞭然! Ⓐは通常通りの償却で初年度償却費として経費に計上できるのは1,665,000円。一方、ⒷやⒸの場合は中古資産であるため、税務上の耐用年数が短縮されるのだ。それぞれ3年、2年での償却計算となる。Ⓑの償却費は3,335,000円であり、Ⓒはなんと5,000,000円! 全額が計上可能なのだ。

 

セツ子★えっ! 何でそうなるの?

 

このカラクリは、法定耐用年数に基づく定率法償却率にある。耐用年数6年の場合、定率法償却率は0.333である。対して、耐用年数2年の場合、定率法償却率は1.000となるのだ。

 

セツ子★普通乗用車の耐用年数は6年だから、4年落ちの中古車だと残り2年ね

 

そう。つまり、100%全額償却が可能になる(なお、年度の途中での購入の場合、月割計算が必要となる)。

 

以上のように、新車で購入するよりは中古車を購入した方が、初年度での節税効果が圧倒的に有利になる。

 

しかし、強調しておきたいのは、トクになるのはあくまでも税務面、それも「購入初年度の節税だけ」を考えたときだけ有利になる点だ。下記のように「トータルコスト」も考慮に入れるべきだろう。

 

●初年度の償却費には大きな差があるが、結局経費に落ちる総額は、ⒶもⒷもⒸもトータル500万円

 

●年数落ちが進んだ車であればあるほど、購入後に多額の修理費用が発生する可能性が高くなる

 

ひとり会社に限らず、会社経営は、決して「節税が全て」ではない。皆さんの目的は、円滑にひとり会社を経営して、利益を獲得すること。その円滑な経営に必要そうであれば、節税対策を検討する。順序を間違えてはいけない。

 

ヒロ税理士★つまり、「経営が先。節税は後!」や

 

もしあなたがボロボロの中古車を買って、その後に修理コストが発生した場合、当然ながらそれは経費となる。節税は可能だが、キャッシュは減る。どちらが良いのか、は言うまでもないだろう。

 

ちなみに、購入ではなくリースの場合、支払ったリース料が経費に落ちる。シンプルでわかりやすい。しかしながら、リース料には金利や税金が含まれるため、トータルのコストは高くなることを覚えておこう。

 

なお、車購入の際、融資を活用することも多いだろう。自動車ディーラーのオートローンを使う人も多いが、一般的に金利が高いものが多く、あまりオススメできない。それなら、メインバンクに相談しよう。一般の設備投資資金として、銀行等からさらに低利で融資を受けることも可能だ。金利コストを削減できる可能性が高いので、オススメする。

次ページ減価償却には、節税効果の大きな「特例制度」がある

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