前回は、事業承継を成功させる「後継者教育」の第一歩について説明しました。今回は、親子間での事業承継を成功させるためのポイントを見ていきます。

承継が最重要課題となる前に対策を打つ

中小企業の事業承継と言えば、子どもが跡を継ぐのが当然、という考えはもはや通用しません。2014年版の中小企業白書によれば、事業承継のうちで親子承継が占める割合は、この20年ほどで見ると、大きくその割合を低下させています。

 

実は、事業承継は企業にとっての優先事項として常に2番目以降のものとされがちです。特に経営者がフル稼働して経営している中小企業では、どうしても喫緊の課題は日々の経営業務とされてしまうのです。また、事業が黒字で運営されている状況では、事業承継の緊急性が感じられないこともあるでしょう。

 

しかし、そのように事業承継の必要性がそれほど感じられないときこそ、絶好の機会と考えるべきです。否応もなく承継が最重要課題となる前に取り組んでおくことが、結果的にはトラブル回避の最良の手段といえます。

後継者に承継の意思を「きちんと伝える」ことが大切

何も言わずに子どもが事業を継いでくれる時代は、とうに過ぎ去りました。今や、もし子どもに事業を継がせたいのであれば、経営者がきちんとその意思を伝え、道筋をつけることが不可欠なのです。親子承継はまずここからはじまります。

 

ただし、子どもに事業を譲りたいという意思を伝える前にすべきことがあります。それは、なぜ自分の子どもを会社の後継者にしたいのか、経営者自身が振り返って考えることです。

 

ただ「子どもだから継がせたい」というだけでは伝えられる方も迷惑です。事業への思い、事業の将来性、子どもの将来を見据えてなど、子どもを後継者としたい理由を明らかにしながら話をすることで、後継者のやる気が促されることも多いのです。

 

さらにこの振り返りのプロセスは、短期間で事業承継をする過程で何を軸に後継者と対話し、考えていくかという方針にもつながっていきます。

 

仮に後継者が既に自社内で働いていて、事業を継ぐことが全社的に暗黙の了解となっていたにしても、やはり経営者としては改めて正式に意思表示をすべきです。それが後継者にとっては、その自覚をより深めることになります。もちろん、もし複数の子どもが自社に勤務しているケースなどでは、なおさら誰が後継者なのかを明らかにしておく必要があると言えます。

 

【図表 形態別の事業承継の推移】

 

本連載は、2016年6月24日刊行の書籍『たった1年で会社をわが子に引き継ぐ方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

浅野 佳史

幻冬舎メディアコンサルティング

近年、日本の多くの中小企業が承継のタイミングを迎えています。承継にあたっては、親から子へと会社を引き継ぐパターンが多いのですが、親子間だからこそ起こるトラブルがあることを忘れてはいけません。 中小企業白書による…

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