前回は、現経営理念と新経営理念を対比すべき理由を説明しました。今回は、現経営者として分析・把握しておきたい後継者の「性格」について見ていきます。

性格分析チャートなどの利用もひとつの方法

後継者主導で新経営理念を打ち出していくことと並行して、後継者の性格や持ち味を改めて分析しておくことも必要です。後継者にとっては自己分析し、自分のことを客観的に見つめ直すいい機会ともなります。

 

後継者の性格はどういったものでしょうか。

 

●社交的で他人と関わりながら物事を進める/こつこつと自らの目標に邁進する

●直感や思いつきを大事にし、臨機応変に対応/あくまでも計画や原則を優先

●話し合いの中で合議的に決断をする/独断で物事を進める

 

難しく考える必要はありません。このように項目をつくって表にしてみたり、既存の性格分析チャートなどを利用してみたりするのもひとつの方法です。

後継者の適性や、強み・弱みを客観的に判断

では、ここで後継者に求められる資質を挙げてみましょう。大きくは次のような4つでしょう。

 

1、経営に必要な先を読む能力・柔軟性

2、人や組織を動かす能力

3、物事の実行力

4、難しい局面を乗り越える精神力

 

1の先を読む能力は今後の努力次第で目に見えて改善できるものですから、現状ではまったくできないからと言って焦りすぎることではないでしょう。

 

2は単純にマネジメント経験があるかどうかに限らず、物事に対してリーダーシップを発揮できるタイプかを見る部分です。

 

この例のように、現経営者から見て、後継者は何に秀でていて、何が不足しているかを確実に認識したいものです。自分の子どもですから、どうしても評価が渋くなりがちですが、できる限り客観的に判断・評価することが、後継者のためになります。

 

もちろん「お前はまだまだだ」とより厳しく評価をして、やる気に火をつけるというのも、確かに後継者のタイプによっては有効な場合もあります。しかしそれは、「結果論として有効であった」のであって、基本はやはり客観的な判断をしなければなりません。

 

次に、後継者は今までにどんな職種を経てきたかを考えてみます。

 

●営業系職種(とびこみ営業、ルート営業、間接的な営業)

●総合職(広報、企画など)

●技術職(研究者、エンジニア)

●サービス職(販売、飲食業など)

●事務職(経理、総務など)

 

このようにどんな職種を経験してきたかによっても、業務に対するアプローチや強みと弱みが変わってきます。たとえば営業に強いのか、管理業務に強いのか、それだけでも大きな違いです。

 

同様に、前記の経営理念や方針の例における、トップダウンとボトムアップのどちらが後継者に適しているのかということも、この分析のプロセスによって導かれた結果が大きく反映されるでしょう。

 

[図表]後継者が備えておきたい素質

本連載は、2016年6月24日刊行の書籍『たった1年で会社をわが子に引き継ぐ方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

浅野 佳史

幻冬舎メディアコンサルティング

近年、日本の多くの中小企業が承継のタイミングを迎えています。承継にあたっては、親から子へと会社を引き継ぐパターンが多いのですが、親子間だからこそ起こるトラブルがあることを忘れてはいけません。 中小企業白書による…

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