従業員の一面を知ることが「リスク回避のヒント」に
前回までで会社の新経営方針が固まり、後継者による新体制のアウトラインが出来上がったことになります。つまりは実質的な新体制の立ち上げが済んだともいえるでしょう。
ここからは具体的に業務の様々な部分を後継者に引き継いでいく段階に入ります。まずは社員それぞれの性格、強みを明らかにして後継者と共有していくことになります。
現幹部社員や次世代幹部社員については第15回、第16回を思い出してみてください。後継者が決定した後に幹部社員へ告知する必要性、それに加え、次世代幹部候補生の指名ができればなおよいということをご説明させていただきました。その段階を経て幹部社員たちについての性格や強みは、ある程度後継者に伝えられたはずです。その上で、ここではまず幹部社員以外の従業員について後継者と情報を共有することを行います。
小規模の会社であれば、一人ひとりのパーソナリティや強みについて、既に後継者が把握できていることと考えられます。実際に従業員とコミュニケーションを取ってみるのもよいでしょう。その上で、後継者が従業員から受けた印象や、会話した内容、仕事への意識などを、経営者がこれまで関わりながら体感してきた従業員の姿とすり合わせしてみれば十分です。
従業員の姿を共有した結果、現経営者には見えなかった従業員の一面、あるいは「見せなかった」一面が見えてくることはよくあるのです。むしろ、この違いの部分は特に大事にすべきです。なぜならば、これが潜在的なリスクを回避するヒントともなるからです。
これは決して、従業員を疑えといっているわけではありませんが、代替わりをすることで、言葉悪く言えば後継者が甘く見られてしまうことも想定できます。その結果、後継者が会社内をコントロールできなくなる、権限が発揮できないということに陥ってしまうことはなんとしても避けなければなりません。
マネジメントを行う管理職がいないような小規模の会社であれば、一従業員の力も大きくなりますから、きちんと一人ひとりの従業員について精査してみるべきだと言えるでしょう。
中規模会社の場合は「キーマン」から優先的に精査を
一方、中規模以上の会社では、従業員一人ひとりについて精査するのは大きな労力を要します。経営者が実際に個別に行うのは困難でしょうから、各部署のキーマンをピックアップしておき、その目を通して個々の従業員についての情報を共有していくことになります。
いずれにせよ、いわゆる職人タイプで技術を持っている従業員、営業で一定以上の成績を上げている従業員という具合に、強みを持っている、あるいは将来性の高い従業員を優先的に見ていくことになると思います。どういった技術を持っているのか、どういった分野に長けているのかという強みや、性格を後継者と共有していくことを目的とします。