(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスの発生から今年で2年が経過しました。“コロナ禍”が長引くにつれて、コロナ感染症そのもの以外にも多くの問題が浮き彫りになっています。なかでも、今、医療界で問題視されているのは、コロナが「がん(癌)」の診断や治療に与える影響です。一体どういうことでしょうか? 内科医の齋藤宏章氏が解説します。

2022年も「検診実施数の減少」が続く可能性

コロナ禍でがん検診参加者が減っている原因はいくつか考えられる。一つは、2020年はまさにコロナ禍による混乱期・感染症対策が徹底された期間であったため、自治体や職場から案内されるがん検診そのものの実施が困難であったことだ。

 

4月の緊急事態宣言の際には、厚生労働省は健康診断等の実施の中止、延期を自治体に要求していた。検診のための検査を提供していた医療機関自体が、この期に検査の提供を中断し、その後も様子を見ていた可能性もある。がん検診を受けたくても受けられるところがない、という状況であった人もいただろう。

 

もう一つの原因はいわゆる“受診控え”である。地域のコロナの感染状況がある程度落ち着き、検診の提供体制が整ってもなお受診したくない、という声が強いということである。

 

ジョンソン・エンド・ジョンソンが2021年12月に公表したアンケート調査結果では、約3割の人は健診やがん検診を控えたいと回答していた(※3)。控えたいと回答した人の理由は経済的に負担、必要性を感じない、コロナ感染症のリスク、が多かったという。特に症状のない健康診断や、がん検診などは受ける余裕なんてない、という人が増えているのだろう。2022年になってもおそらく同様の傾向が続いていくことが予想される。

 

■実は東日本大震災後も「同じ傾向」が…「被災地」と「コロナ禍」の共通点

実は日本はこのような、がん検診の参加が継続的に低下した状況を経験している。2011年の東日本大震災後の被災地でのがん検診である。震災の影響を大きく受けた南相馬市では2011年、2012年と複数年にわたり大腸がんや乳がんの検診参加者数が減少し、2018年になっても避難や独居の状態にある人は受診しにくい傾向が続いていた(※4)

 

実は今のコロナ禍の状況は、震災後と共通点がある。医療機関へのアクセスが制限され、在宅で籠りがち、周囲との繋がりも希薄になり、かつ状況が長期化している点などだ。コロナの収束の目処が立たないこと、個人の経済状況が悪化しがちなこと、社会的に孤立する人が増えるかもしれないこと、などは今後もがん検診の参加者数が伸び悩む要因になりえるし、コロナ禍でより追い詰められる人は、がん検診を受けなくなる可能性がある。

 

※3 ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカル カンパニー『全国15,000人「健康診断・人間ドック、がん検診等、医療受診に関する意識調査」2021年版 医師調査も実施』(2021年12月14日. https://www.jnj.co.jp/media-center/press-releases/20211214/pdf/)

※4 Saito H et al. The long term participation trend for the colorectal cancer screening after the 2011 triple disaster in Minamisoma City, Fukushima, Japan. Sci Rep 2021

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