(※画像はイメージです/PIXTA)

相続における遺言書の重要性はだいぶん理解が進みましたが、とはいえ「書き残しさえすればいい」という認識ではいけません。相続人が判断に迷うあいまいな記述があれば、トラブルの火種になるばかりか、専門家の手を借りるなどして、結局コストがかさんでしまいます。不動産と相続を専門に取り扱う、山村暢彦弁護士が、遺言書作成のポイントを解説します。

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不明瞭な遺言書を残すなら、なにもない方がマシ!?

近年では、相続における「遺言書」の重要性がかなり周知されてきました。遺言書には、「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がありますが、しばしば話題になるのが、「公正証書遺言」「自筆証書遺言」の違いと、そのメリット・デメリットです。「秘密証書遺言」については、活用すべきケースが少ないため本記事では触れないこととします。

 

相続を専門的に取り扱う筆者としては、遺言書のなかでも「公正証書遺言」の作成を強くお勧めしています。

 

理由の第一として「中途半端な遺言書により、相続や親族の人間関係が複雑になってしまった」という、あまたの実例の存在があります。誤解を恐れずに申し上げるなら、「中途半端な遺言書を残すぐらいなら、いっそなにもない方がマシ」なのです。

 

自筆証書遺言で、判断に困る中途半端な記述・あいまいな記述をしてしまうと、的確な判断ができず、余計な手続きが増えるばかりか、親族が揉める原因になりかねません。しかしそれ以前に、だれも遺言書の存在に気づかないという、「トラブル以前」の状況も起こり得ます。

 

★法的な形式を満たさない「不完全な遺言書」では…

遺言書は、かなり厳格に法律の要件が決まっており、それに則らないものは無効となります。これまで多くの遺言書が偽造・改竄されてきたことがその理由です。また、ご高齢で判断能力が落ちてきた方を言いくるめ「だれそれに全部相続させる」といった内容を書かせる、遺言書を書けない方に口頭で強引に同意を取りつけて勝手に書き記す、などもよくあるケースです。

 

★遺言書が「そもそも見つからない」問題

自筆証書遺言には「そもそも遺言書が発見されない」という問題があります。なぜなら、遺言書を書いた本人が「遺言書を書いてここに置きました」とは、なかなかいわないからです。そのため、後日、押し入れの奥から発見されるといったことが起こります。信頼しているお子さんなどに託せればいいのでしょうが、むしろそのような方がいないからこそ「見つからない問題」が発生するといえるのかもしれません。

「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の使い勝手を整理

ここで遺言書の種類について、改めて整理してみましょう。筆者は実務的な視点から、遺言書は基本的に下記の3つとして考えればいいと思っています。

 

●公正証書遺言

●自筆証書遺言(法務局保管)

●自筆証書遺言(遺言者保管)

 

まず「公正証書遺言」は、公証役場という役所で作成し、担当者がきっちりとチェックします。「自筆証書遺言」は、近年の相続法改正後、法務局で預かってもらえる制度がスタートしました。法務局に預けない場合は、自分自身で書いて封をする、従来からの「自筆証書遺言」となります。

 

さて、これら3つの遺言について、筆者の実務的な体感をもとに評価してみました。

 

 

 

「法的効力」というのが、上述した「中途半端な遺言書」に関連します。公正証書遺言の場合、作成の段階から弁護士や司法書士等の専門家の手を借りますが、さらに公証役場の専門職もチェックするため、文言が不正確となって思い通りの権利移転ができない、ということはまず起こりません。

 

しかし、一般の方が専門家の目と手を経た遺言と同等のものを作成するのはかなり困難です。あいまいな表現が残り、条件がついてるのか、それとも法律通りに権利を移転させていいのか等、不明確になりがちです。

 

自筆証書遺言を保管してくれる法務局も、内容のチェックはしてくれません。つまり、表の「法的効力」は、「中身の安定性」とイコールであるといえます。その点を考えると、中身の安定性は、やはり公正証書主遺言が圧倒的にいいのです。

 

次に「検索可否」ですが、これは遺言書がきちんと見つけられる状態にあるかどうかです。自筆証書遺言をタンス等にしまい込んでいれば、捨てられるリスクがありますが、法務局で保管してもらえば必ず見つかります。公正証書遺言も同様で、検索システムで検索がかかります。どこで作ったのかがわからなくても、全国の公証役場のリストで調べられます。

 

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