不動産の相続は、分割の方法などを巡って相続人間での争いが起こりがちです。しかし、その不動産が「賃貸物件」だった場合、大変さは倍増します。協議が紛糾している間にも、該当の物件からは家賃が発生し、また、修繕の必要が生じれば、都度迅速に対応しなければなりません。不動産と相続を専門に取り扱う、山村暢彦弁護士が解説します。

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相続手続き難航中、賃料はだれが受け取るのか?

不動産の相続は、そもそも面倒で難しいものなのですが、さらにそこへ「借家・アパート・貸家」という要素が絡むと、問題は非常に困難になりがちです。しかし、そんな事情を知らない方、意識できていない方は非常に多いといえます。

 

相続が発生し、相続手続きが始まると「遺産分割協議」が行われます。法律では、相続人に応じた相続割合を指定しているだけで、具体的な財産の分配方法まで指定しているわけではありません。

 

そのため、分割の仕方は相続人同士で話し合うことになりますが、そのために財産の奪い合いに発展するなど、しばしば「揉めごと化」してしまいます。

 

しかし、本当の問題が起こるのはここから先なのです。

 

揉めごとの解決のため協議をしている間にも、賃貸物件の運営は継続しなければなりません。毎月の賃料発生はもちろんのこと、老朽化等によるトラブルが発生すれば、その対応も必要です。

 

相続手続きが難航中している間にも発生し続ける賃貸物件の賃料を「だれが賃料を受け取るのか」という問題が生じてきます。

 

本当なら、相続人のだれかが代表となり、一時的な預かり口座を設定できればいちばんですが、相続人同士いがみ合っている状態では「ネコババするのでは?」等、疑心暗鬼になりがちです。

 

相続人同士に信頼がなければ、だれも預かり口座を設定したがりません。そうなると、賃借人も、いったいだれに家賃を払えばいいのか、わからなくなってしまいます。間に不動産管理会社が入っていても同じです。「お支払いすべき家賃、ウチで留めておくのでしょうか…?」と、困惑させてしまいます。

 

このように、「相続の手続き」と「賃料の問題」が同時並行する状態は、かなり悩ましいものなのです。

 

賃金はいずれかに貯めておくとしても、支出の管理も大変です。

 

大家さんの立場なら、入退去の原状回復のために清掃を入れたり、設備等が壊れたりすれば、お金を出して業者に頼まなければいけません。しかし、そもそもだれがその手配をするのか、また、その支出額が妥当か否かといったことも、紛争の原因になりやすいのです。

 

上記の説明だけで、大変さや面倒さがよくわかるのではないでしょうか。

 

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