コロナによる外出禁止、余命宣告…富裕層が「自筆証書遺言」を選ぶべき緊急事態【弁護士が解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

現在、多くの方が活用している遺言書には「公正証書遺言」「自筆証書遺言」の2種類があり、一般的には公正証書遺言のほうが、あらゆるリスクが排除できるためお勧めだといえます。しかし、場合によっては、資産の着実な移転のため、速やかに自筆証書遺言を作成すべきケースもあります。不動産と相続を専門に取り扱う、山村暢彦弁護士が解説します。

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資産状況がよく変動する方は、自筆証書遺言も選択肢に

皆さんは「検認手続」という言葉をご存じでしょうか。自筆証書遺言を作成後、作成者の方が亡くなると、裁判所で検認手続を行うことになります(裁判所ウェブサイト「遺言書の検認」)。具体的には、遺言書を保有する人や見つけた人が、家庭裁判所へ遺言書を提出し、相続人立会いのもと開封・確認する作業です。

 

実は、この工程を知らない人はかなり多いのです。

 

自筆証書遺言を書くだけなら、確かにタダなのですが、裁判所の検認手続にはコストがかかります。それを考えると、「コストがかからない(低い)から」という理由で自筆証書遺言を選ぶのは、適切なことではないでしょう。

 

とはいえ、自筆証書遺言であっても、法務局の保管制度を利用すれば検認手続は不要です。なぜなら、法務局が適正な保管を担保してくれているからです。

 

したがって、遺言書の作成費用をできる限り抑えたいということであれば、自筆証書を作ったうえで、法務局の保管制度を使うほうがいいのです。

 

しかし筆者は、たとえコストがかかったとしても、原則的に「公正証書遺言」を選択すべきだと考えています。作成にコストがかかるとはいえ、資産総額の1%未満に収まります。たとえば1億円の相続でも、50万円未満が相場です。

 

「数十万円もかかるじゃないか!」と考える方もいるかもしれませんが、その後のトラブル対応や、遺産承継業務でお金払うことを考えるなら、やはり公正証書遺言を残したほうが、圧倒的に安いといえます。

 

収益物件や自宅を保有されている場合、ほとんどすべての方に公正証書遺言をお勧めすべきと思っていますが、不動産投資をされている方は資産状況が変動する可能性も考えられます。ほかにも、離婚等による家族関係の変化があるなら、そのたびに手数料をかけて公正証書遺言を作り直すのは、さすがにもったいでしょう。

緊急性がある場合は、いますぐ自筆証書遺言を準備して

上記のような事情から、資産状況が変動する可能性がある場合、いったんは「自筆証書遺言+法務局」の補完制度を使っておくべきだと思います。

 

せっかく自筆証書遺言を作るなら、どんなに面倒でも法務局での保管制度を利用しましょう。そうでないと「遺言書が見つからない問題」「検認手続のコスト」の懸念が残るからです。検認手続はかなり面倒ですから、法務局の保管制度を活用したほうが、トータルで見たときに得になります。

 

ときには、病気等の事情により、緊急性を持って遺言書作成をしなければならないこともあるでしょう。そのような場合は、すぐに自筆証書遺言を作るべきだと思います。具体的な例をあげますと、コロナの影響で、高齢の方が施設の出入りを厳しく制限される、公証役場に行きたくても医師から外出を禁じられている、といった状況です。これは仕方ないので、緊急避難的に自筆証書遺言を作成するしかありません。

 

そのため、本当なら、遺言書を作成するならほぼすべての方に「公正証書遺言」をお勧めしたいですが、それを許さない状況や、遺言書を記しておくべき資産状況変動がある場合は、「自筆証書遺言+法務局」という手段を、さらに緊急性があるなら、純粋な自筆証書遺言が選択肢になるといえます。

 

山村法律事務所
代表弁護士 山村暢彦

 

 

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弁護士法人 山村法律事務所

 代表弁護士

実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産・相続トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。

数年前より「不動産に強い」との評判から、「不動産相続」業務が急増している。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社から、複雑な相続業務の依頼が多い。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。

相続開始直後や、事前の相続対策の相談も増えており、「できる限り揉めずに、早期に解決する」ことを信条とする。また、相続税に強い税理士、民事信託に強い司法書士、裁判所鑑定をこなす不動産鑑定士等の専門家とも連携し、弁護士の枠内だけにとどまらない解決策、予防策を提案できる。

クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続関連のトラブルについて、解決策を自分ごとのように提案できることが何よりの喜び。

現在は、弁護士法人化し、所属弁護士数が3名となり、事務所総数6名体制。不動産・建設・相続・事業承継と分野ごとに専門担当弁護士を育成し、より不動産・相続関連分野の特化型事務所へ。2020年4月の独立開業後、1年で法人化、2年で弁護士数3名へと、その成長速度から、関連士業へと向けた士業事務所経営セミナーなどの対応経験もあり。

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著者紹介

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