(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍で揺れる航空業界ですが、民間企業による空港の運営事例は、ここ数年で国内でも増えてきました。大阪国際空港と関西国際空港の運営に始まり、北海道の七空港の民営化が始まっています。その狙いとは何でしょうか。渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)で「空港施設の民営化」の狙いを明らかにします。

日本企業が運営ノウハウを世界に輸出する日

日本国内には、空港や水道、道路など色々なインフラがたくさんあります。これを民営化していくことで日本企業に運営ノウハウが蓄積されると、ヴァンシ・グループのように他国の空港やインフラなどの運営という、新しいビジネスに取り組めるようになります。最先端の技術やサービスを国内で活用し、企業が積極的に習得していける環境があれば、経済と同様に日本企業も活性化して競争力を獲得できます。

 

先進各国ではインフラはでき上がっている状態ですが、これからまだまだ成長していこうという新興国は、これからもインフラが整えられていくことになります。新興国でのインフラ整備は、各国政府が重要な国家事業として行っていて、日本も政府との協力で民間の建設会社が受注しています。民間企業がインフラ運営ノウハウを持っていれば、建設した後の運営も事業化することができます。

 

日本の場合、これだけ多くのインフラがすでに建設されてきた中で、その多くを行政が運営してきました。このため民間企業としてのインフラ運営ノウハウは、それほど蓄積されてきませんでした。今からでも遅くないので、もう少し民間企業に開放し、自分たちで運営の技術や経験を身につけていくと、これから日本企業が世界市場と戦えるようになるのではないか、という状況にあるのです。

 

フランスやオーストラリアという日本の友好国には、インフラ運営の優れた能力を持つ企業があります。そうした企業からもノウハウを吸収していき、日本のインフラマネジメントのノウハウを活かして世界市場に打って出る、そんな新しいビジネスを始めましょう。

 

民営化を一概に怖がって進めないでいることは、新しいビジネスチャンスを失っていることになります。新しいインフラが世界にどんどん供給されていくのに、マネジメント事業に参加する企業がないのは、実にもったいない話です。

 

戦後の高度成長期から1990年代にかけて、日本はどんどんインフラを建設しました。次はこれを活かして、マネジメントビジネスを発展させていく段階です。国内に十分にあるハードを土台にソフトの部分を蓄積し、日本流のノウハウをもとに世界各国のインフラのマネジメントに進出する。その実績を積み重ねれば、当然、海外での空港やインフラ建設といった大きな事業を獲得する際の強みや有利さにもつながっていきます。

 

これからは、そのくらいの野心を持って世界に出ていくことが必要です。負けないことを考え続けてジリ貧に耐えるよりも、マインドを変えて打って出て、勝つことが大事なのです。

 

渡瀬 裕哉
国際政治アナリスト
早稲田大学招聘研究員

 

 

※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

渡瀬 裕哉

ワニブックス

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