オンライン診療の特例恒久化に向けた動向と論点…初診対面原則の是非が争点、曖昧な「かかりつけ医」をどうするか

オンライン診療の特例恒久化に向けた動向と論点…初診対面原則の是非が争点、曖昧な「かかりつけ医」をどうするか
(写真はイメージです/PIXTA)

パソコンやスマートフォンの画面越しに医師とやり取りするオンライン診療。忙しい人にとっては、仕事や家事等の空き時間に受診することができるため非常に便利です。しかし、医師にわたる情報がかなり限定されるため病気の見落としや誤診が懸念されています。本記事では、ニッセイ基礎研究所の三原岳氏がオンライン診療に関する論点や課題について解説します。 ※本記事は、ニッセイ基礎研究所の医療保険制度に関するレポートを転載したものです。

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    どうなる?オンライン診療の特例恒久化

    パソコンやスマートフォンの画面越しに医師とやり取りする「オンライン診療」に関する特例の恒久化論議の方向性が固まった。この論議では新型コロナウイルスの拡大を受けて、初診からオンライン診療を利用できる特例が2020年4月から導入されており、厚生労働省の有識者検討会は特例の恒久化に向けた方策を議論し、2021年11月末までに内容を固めた。

     

    具体的には、日頃から直接の対面診療を重ねているなど患者と直接的な関係を持つ「かかりつけの医師」がオンライン診療を実施することをベースとしつつも、「かかりつけの医師」並みに患者の情報を多く持っているケースに関しては、「かかりつけの医師」ではない医師でも初診からオンライン診療が認められる方向となった。新たな方針は新型コロナウイルスの特例が終わった後、適用されることになっており、近く正式決定される見通しだ。

     

    本稿ではオンライン診療を巡る経緯を整理した上で、「かかりつけ医」の機能が曖昧な点を含めて、オンライン診療に関する論点や課題を明らかにする。

    オンライン診療を巡る経緯

    争点化した初診対面原則の特例

     

    まず、オンライン診療を巡る経緯を簡単に整理すると、オンライン診療が本格的に保険診療の対象となったのは2018年度である。

     

    それまでは離島など限定的にしか認められていなかったが、厚生労働省は2018年度診療報酬改定で、「オンライン診療科」などの項目を創設するとともに、実施に関する留意点などを定めた「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下、指針)を2018年3月に策定した。

     

    その際には、初診を対面で診察した患者に対象を限定する「初診対面原則」の考え方が採用されたほか、対象疾患などについても様々な要件が定められた。

     

    その後、オンライン診療を実施する医療機関が広がらないとして、2020年度診療報酬改定で対象疾患が追加されるなど、制度を少しずつ変えていたが、新型コロナウイルス対策の一環として、安倍晋三首相(肩書は全て発言当時、以下同じ)が「最前線で活躍されている医師・看護師の皆様を院内感染リスクから守るためにも、オンライン診療を活用していくことが重要」と表明
    ※ 2020年3月31日経済財政諮問会議議事録を参照。

     

    経済財政諮問会議や規制改革推進会議を中心とした議論の結果、新型コロナウイルス対策の時限的な特例として、初診対面原則を事実上、2020年4月から撤廃された。

     

    菅政権の特例恒久化方針と、その後の議論

     

    さらに、2020年9月に就任した菅義偉首相がデジタル化を一つの主要施策に位置付けるとともに、同年10月の所信表明演説では「デジタル化による利便性の向上」を図るため、「オンライン診療の恒久化を推進します」と表明した。

     

    これを受けて、田村憲久厚生労働相、平井卓也デジタル改革担当相、河野太郎行政改革担当相は2020年10月、特例の恒久化で合意。具体的な内容は厚生労働省に設置されている「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(以下、検討会)に委ねられた。
    ※ 2020年10月9日『朝日新聞』『毎日新聞』を参照。

     

    検討会は元々、2019年1月に設置された後、技術の発展やデータなどの収集結果に基づき、指針を定期的に見直す目的で設置されていたが、上記のような菅政権の方針を踏まえ、検討会は2020年11月から議論を再開した。

     

    その際には規制改革推進会議の議論にも加わる民間企業の経営者、現場の中堅医師、保険者の代表、学識者、患者がメンバーとして新しく追加され、初診対面原則を撤廃する際の方策などを模索。2021年11月の検討会で、新たな指針案が取りまとめられた。
     

    次ページ改定される指針案の概要

    本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年12月28日に公開したレポートを転載したものです。

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