オンライン診療の特例恒久化に向けた動向と論点…初診対面原則の是非が争点、曖昧な「かかりつけ医」をどうするか

オンライン診療の特例恒久化に向けた動向と論点…初診対面原則の是非が争点、曖昧な「かかりつけ医」をどうするか
(写真はイメージです/PIXTA)

パソコンやスマートフォンの画面越しに医師とやり取りするオンライン診療。忙しい人にとっては、仕事や家事等の空き時間に受診することができるため非常に便利です。しかし、医師にわたる情報がかなり限定されるため病気の見落としや誤診が懸念されています。本記事では、ニッセイ基礎研究所の三原岳氏がオンライン診療に関する論点や課題について解説します。 ※本記事は、ニッセイ基礎研究所の医療保険制度に関するレポートを転載したものです。

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    「かかりつけ医」とは何か

    付言すると、「かかりつけ医」とは何なのか、その機能を明確にする必要がある。かかりつけ医の定義とか、曖昧な言葉遣いは以前の拙稿※1で論じたので、ここでは詳しく述べないが、かかりつけ医とは患者―医師の関係性に依拠する曖昧な概念であり、特に何か要件が決まっているわけではない※2
    ※1 2020年8月16日拙稿「医療制度における『かかりつけ医』の意味を問い直す」を参照。
    ※2 かかりつけ医の定義については、日医などが2013年8月にまとめた報告書で、「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」とされている。

     

    このため、極論すれば筆者が知り合いのA医師に対し、「何かあったら宜しくね」とお願いするだけで、かかりつけの関係は成立する。つまり、患者の個人的な判断に頼っている分、かかりつけ医の位置付けは非常に曖昧になる。

     

    こうした曖昧な点は新しい指針案で使われた「かかりつけの医師」でも変わっておらず、「『かかりつけの医師』以外の医師」が「かかりつけ医の医師」に切り替わる基準は不明確である。

     

    このため、「かかりつけの医師」の要件など制度的な位置付けを明確にしなければ、「オンライン診療を幅広く広げるべき」「いや、オンラインは情報量に劣るので、初診対面が優先」「かかりつけ医だったら初診からオンラインOK」「ただ、かかりつけ医は曖昧」といった堂々巡りにも似た議論が続く危険性がある。

    おわりに

    今回の議論を総合すると、こういった形で整理できるのではないか。つまり、政治主導で初診対面原則の特例的な撤廃、さらに特例の恒久化が決まったものの、医療サービスの特性を踏まえる必要性に鑑み、厚生労働省の検討会では「かかりつけの医師」を中心に部分的に規制が緩和されることが決まった。

     

    しかし、以前から「かかりつけ医」の役割や機能は不明確であり、その曖昧さが新しい指針案にも反映された結果、部分的な見直しにとどまった――。

     

    こうした議論になった背景には、初診対面原則の是非に関心が集中したことが影響している。その結果、曖昧な「かかりつけ医」機能の明確化とか、診療報酬の問題、医療情報の集約化といった重要な論点が抜け落ちてしまった感もある。

     

    今後は患者―医師の関係を固定化させる制度の是非も含めて、かかりつけ医の機能を明確にする制度化の可能性を探るとともに、その一つとしてオンライン診療を位置付けるような議論が求められるのではないだろうか。
    ※ なお、選択肢としては、イギリスのように患者―医師関係を完全に固定させる登録制だけでなく、フランスのように登録制度と患者負担を組み合わせる方法も考えられる。その論点としては、2020年8月16日拙稿「医療制度における『かかりつけ医』の意味を問い直す」を参照。

     

     

    三原 岳

    ニッセイ基礎研究所

     

     

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    本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年12月28日に公開したレポートを転載したものです。

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