(※写真はイメージです/PIXTA)

今、40代半ば以上の人材の扱いに課題を抱えている企業が増えています。経験豊富であるにもかかわらず、なぜパフォーマンスが下がってしまうのか。読み解くカギは「個人のストレス対処能力」にありました。ストレス対処能力は「前向き度」と「自己信頼度」という指標で測られます。前向き度を構成する要素は、「有意味感」「処理可能感」「把握可能感」の3つ。自己信頼度を構成する要素は、「効力予期」「結果予期」の2つ。それぞれ、記事内で詳しく見ていきましょう。

同じ手法で「ローパフォーマー化した若手」まで再生

こうして運用チームでローパフォーマー化していたベテランが見事に再生したのですが、それだけではありませんでした。ローパフォーマー化していた若手も再生したのです。

 

効率面だけを考えると、経験の浅い若手社員に任せるよりも、実績のあるメンバーで行うほうが確実ですし、短期間のうちに仕事をこなすことができます。実際にそうしていた結果、若手社員はいつまで経っても、より上の役割の仕事を任されずに向上心を失っていました。一緒に仕事をしないので、ノウハウも引き継がれません。こうしたことが積み重なり、若手社員の有意味感や把握可能感、処理可能感といった前向き度のすべてに悪影響を与えてしまい、彼らのモチベーションは低下していました。

 

そこで、ベテランのローパフォーマーの再生を支援していたメンバーが、活動の趣旨を若手を含めた全員に説明しました。そのあと、それぞれのメンバーが感じている課題や問題点を挙げてもらったところ、若手からは今まで、こういう話をしたこともなかったし、聴いてもらったこともなかったという声が多数出たそうです。「人間関係の悩み」を増大し、「周囲の支援」の不足を感じさせていたはずです。またベテランと話ができていなかったことで「把握可能感」も失われていたことでしょう。

 

■「見て覚えろ」はモチベーションを低下させかねない育成法

また徒弟制度のような「見て覚えろ」という職人気質な仕事の進め方をしており、それにも問題がありました。若い社員は、運用業務とはそういうもので、それが当たり前の働き方なのだと受け止めていました。これは「業務の決定権」がない、「業務の達成感」がないなどと受け止めることにつながり、人によっては「有意味感」の喪失につながってしまったのだと思います。

 

ベテラン再生活動においては、一年目は強いトップダウンで業務改革を進めて、それなりの成果を上げることができました。それは会社にとっても顧客にとっても良いことでした。しかしチームの若手メンバーは、やらされているばかりで、ただ忙しかったという感想をもっていたのです。これでは業務の決定権がないと感じるでしょうし、達成感と有意味感の喪失につながったかもしれません。人によっては、人間関係が難しいと感じたことでしょう。そこでそののちは、活動の進め方を若手社員が中心になって考えるようにしたのです。

 

分からないところがあれば、若手社員はベテラン社員に質問し、聞いた内容を資料化して、少しずつノウハウを「見える化」していくようになりました。それまでは、先輩のノウハウを習得するチャンスがなかったのです。これでは周囲の支援がないと感じるでしょう。把握可能感や処理可能感の低下に結び付くと考えられますし、自己信頼度の低下にも直結します。

 

こうしたことに早く気づき、若手への悪影響を改善して、最終的には全員参加の活性化されたチームを作り上げることに成功しました。

 

有意味感がないという若い社員の離職率は高い傾向にあります。活動的な人は転職するのかもしれませんが、諦め感の強い人は会社に残って、有意味感が低いままローパフォーマーにとして働き続けます。その際には自己信頼度も前向き度もすべてが低くなっています。まずストレスチェックによって、仕事のストレス要因と個人のストレス対処能力、および職務統制傾向を見極めることが重要です。そして適切な対応によって、ビジネス適応力の向上を図ることをお勧めします。

 

若手だけでなく、ベテランもまったく同じことですが、伸びしろも吸収力も大きい若手のほうが急成長する可能性があるのです。

 

 

梅本 哲

株式会社医療産業研究所 代表取締役

 

 

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※本連載は、梅本哲氏の著書『サイエンスドリブン』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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梅本 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

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