代位弁済があっても、賃借人の不払の事実は消えない
この点について判断した事例が、大阪高等裁判所平成25年11月22日判決です。
この事例では、賃借人は長期間家賃の滞納をしていたものの、家賃保証会社により賃料が支払われていたため、賃借人が解除を争ったのですが、裁判所は、以下のように述べて、賃貸人からの解除を認めました。
「本件保証委託契約のような賃貸借保証委託契約は,保証会社が賃借人の賃貸人に対する賃料支払債務を保証し,賃借人が賃料の支払を怠った場合に,保証会社が保証限度額内で賃貸人にこれを支払うこととするものであり,これにより,賃貸人にとっては安定確実な賃料収受を可能とし,賃借人にとっても容易に賃借が可能になるという利益をもたらすものであると考えられる。」
「しかし,賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の支払は代位弁済であって,賃借人による賃料の支払ではないから,賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するに当たり,保証会社による代位弁済の事実を考慮することは相当でない。なぜなら,保証会社の保証はあくまでも保証委託契約に基づく保証の履行であって,これにより,賃借人の賃料の不払という事実に消長を来すものではなく,ひいてはこれによる賃貸借契約の解除原因事実の発生という事態を妨げるものではないことは明らかである。」
このような事案について最高裁判例はまだありませんが、同様の結論を取る裁判例は複数出ていますので(福岡高等裁判所平成28年2月29日判決、東京地方裁判所平成27年7月16日判決等)、裁判実務としては上記判断が固まりつつ有ると言えます。
※この記事は、2020年10月3日時点の情報に基づいて書かれています(2021年12月28日再監修済)。
北村 亮典
弁護士
こすぎ法律事務所