脳の発達途上の子どもには深刻な影響
「デジタル・ヘロイン」という言葉も登場しました。
それが、子どもたちの間で急激に増えている……。
脳の発達途上にある子どもの場合、影響は深刻です。決して軽く考えていい問題ではありません。
軽度の依存では、「つねにスマホが手放せない」「用もないのにネットにつなぐ」といった程度ですが、重度の依存になると、「ネットをしたいがために学校を休む」「食事や風呂の時間すら惜しみ、生活の大半をネットにあてる」という深刻な状況になります。
親が心配してスマホを取り上げたり、ネットの接続を切ったりすると、暴力行動が出る子どももいます。それはアルコール依存症と同じです。
リビングに置いてあるデスクトップパソコンを使っていたうちはまだよかったのですが、スマホやタブレットが普及して、状況は悪化の一途をたどっているように感じます。
■依存症大国ニッポン!?
すべての依存症は、薬物でなくても麻薬や覚せい剤の中毒患者と同様の脳の器質的変化をもたらし、人格を荒廃させてしまう恐れがあります。
しかし、日本は依存症に対して非常に無防備な社会だと言わざるを得ません。アルコールにしろギャンブルにしろネットにしろ、国際的にも危険性が認知され、国レベルでの対応が始まっているのに、日本では企業に遠慮して、政府もマスコミもお茶を濁すような対応しかしていないのです。
諸外国には、「依存しやすいものがあれば依存症を生む」という認識があります。
日本を含めてどこの国でも、覚せい剤や麻薬を禁止し厳密に取り締まっているのは、その手の物質がかなり高い確率で、どんな人にでも依存症を作ってしまうという認識があるからです。
そして、麻薬のようなかたちで禁止できないものについては、「アクセスを制限する」というのが国際的なコンセンサスになりつつあります。
ギャンブルであれば、アメリカはラスベガス、中国ならマカオという具合に場所を制限し、ふだん生活している場からは遠いところに設営します(東京にカジノを作ろうなどという構想は、国際基準から考えてもバカげていると私は考えます)。
仮にふだん生活している場所と近いところでギャンブルをやるなら、「毎日は開催させない」という工夫をします。競馬などの公営ギャンブルは、どこの国でも毎日は開催されていません。それだけで依存症のリスクはかなり下がるのです。
アルコールであれば、フランスやスウェーデンではアルコール類の飲酒シーンのテレビCMを禁止していますし、アルコールの安売り規制を始めた国もたくさんあります。アメリカに旅行した人ならわかると思いますが、多くの州で夜時をすぎたら、どんな店でもアルコール類は買えないようになっています。
ネットに関しては、オンラインゲームへの依存が社会問題化していた中国と韓国が先陣を切り、とくに児童の使用については徹底した規制をかけています。アメリカでも、ネット依存症の診断基準が定められました。
その点、日本の対応はまったくもって遅れています。日本では会社帰りに毎日寄れる場所にパチンコ店があるし、アルコール類はコンビニで24時間買えます。CMもおいしそうにお酒を飲むシーンがバンバン流れます。
子どもたちはスマホで当たり前のようにオンラインゲームをやり、親は無邪気にそれを眺めている。国の対応も期待できません。