(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の両親のもとに通い、あれこれ面倒を見てきた女性。ところが突然、ずっと別世帯だった兄が、妻子と暮らす自宅を離れて両親と同居をはじめました。そればかりか、将来の遺産分割について、あまりにも不公平な条件を突き付けてきて…。一体どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

「兄が財産を隠すのではないかと、不安です」

山本さんは、100歩譲って不動産と現金という分け方でも構わないと思う、と前置きしたうえで、両親が保有する預貯金と不動産の比率について知りたいといいました。

 

山本さんが実家に出入りしていたころの資料や情報をもとに筆者が確認したところ、現金25%、不動産75%の割合となりました。年金も家賃収入も潤沢な両親ですが、兄があれこれを取り仕切るようになり、状況が変わっている可能性もあります。また、これから介護等が始まれば現金が目減りする可能性は高く、「広い自宅+家賃収入のある不動産」「老後資金の残りの現金」という分け方では、不公平なのは明らかです。

 

「ずっと両親の面倒を見てきたのは私なのです。両親の世話のために、夫や子どもたちに不自由な思いをさせたことだってあります。兄の行動には納得できませんし、両親は一体どう思っているのか…」

 

先日、久しぶりに母親と話したところ、兄は両親の預金通帳を預かって管理を始めたそうです。母親は「お兄ちゃんがすべてやってくれるから…」といっていますが、山本さんは、兄が両親の財産を隠すのではないかと不安を感じています。

禍根を残さないためにも、父親に遺言書を書いてもらう

山本さんは、兄が本当に両親のサポートをしてくれるなら遺産の分配が偏ってもかまわないと考えていますが、いずれにしろ、資産のすべてを明らかにしてもらうことが条件です。

 

しかし、このままの状況を放置しては、いずれ揉め事になるのは必至です。そのため、筆者からは、いまのうちに父親に遺言書を作ってもらうようにアドバイスしました。

 

今回の場合、財産を等分にするなら不動産は1つずつが妥当です。しかし、自宅もほしいがアパートもほしい…というのではバランスが取れません。

 

山本さんは「できるだけ早く、家族で話し合います」と言い残して帰られました。キッチリ半分にすることは難しくても、ほどほどの点があるはずです。

 

【対策と注意点】

 

バランスの取れない分割ではあまりに不公平。しっかりと話し合いを

できるだけ早く、父親に遺言書を作成してもらう

 

兄は「同居=親の面倒を見ている」という認識を持ち、自分が多くの資産をもらうのは当然と考えているように見受けられます。しかし、法的にはきょうだいは等分、平等相続が原則です。最終的には父親の意思で決着することになるでしょうが、まずは家族で腹を割って話し合うことが重要です。

 

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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