写真提供:伊藤朱子アトリエ

日本の住宅は、省エネ基準が不十分なこと等により、他の先進国と比べて「驚くほど寒く」なっていることをご存じでしょうか。ここでは、日本の住まいにおける「ヒートショック」の実態や、「住まいと健康の深い関係」について、住まいるサポート株式会社代表取締役の高橋彰氏が解説していきます。

寒すぎる脱衣場…年間約1.9万人もの人が亡くなるワケ

さて、住宅の断熱性能不足は、どうして健康に良くないのでしょうか?

 

[図表4]は、我が国の平成20年の月別の溺死者数のデータです。溺死というと、夏に海水浴場等でおぼれることをイメージしがちですが、実は夏に溺死する人はわずかです。冬に溺死する人の方が圧倒的に多いのです。

 

出典:厚生労働省「人口動態統計特殊報告」
[図表4]月別の溺死者数(平成20年) 出典:厚生労働省「人口動態統計特殊報告」

 

ではどこで溺死してしまうのでしょうか?

 

それは、家庭のお風呂です。「ヒートショック」という言葉は、だいぶ一般的になってきたかと思いますが、家の室温差で、心臓や脳に負担がかかることを指します。特に多いのが冬の入浴時です。

 

[図表5]をご覧ください。日本の一般的な住宅の脱衣室や浴室は寒いので、入浴のために服を脱ぐと鳥肌が立ちます。

 

鳥肌が立つというのは、血管が収縮し、血圧が急上昇している状態です。そして、寒い家ほどお風呂のお湯の温度を高めにしている傾向があります。そのため、お湯につかると一気に血圧が下がって気を失い、そのまま溺死してしまう方が多いのです。

 

冬に溺死者が多いのはそのためです。

 

出典:PIXTA
[図表5]危険な室内の温度差(ヒートショックリスク) 出典:PIXTA

 

溺死以外にも、冬の浴室で脳卒中や心筋梗塞等で倒れた方も多いと思われます。「思われる」というのは、私が調べた範囲では、厚生労働省は、これらの疾患の発生場所のデータは把握していないのか、公表していないようなので、浴室で脳卒中や心筋梗塞等で倒れた方の人数はよくわからないのです。

 

一方、消費者庁のプレスリリース([図表6])によると、年間19,000人もの方が、入浴中に死亡していると推計されています。

 

[図表6]消費者庁のプレスリリース

 

昨年の交通事故死者数は、2,839人ですから、交通事故死者数の7倍近くに上ります。そして、さらに、この19,000人の死亡者数の2倍から3倍もの方々が、命は取りとめたものの、半身不随等の後遺症が残ってしまい、健康寿命を失っていると言われています。

 

◇ヒートショックリスクが高いのは寒い地域ではない!

 

東京都健康長寿医療センター研究所等の調査によると、都道府県別の高齢者の人口当たりの入浴中のヒートショックの発生率の1位は、何と香川県です([図表7]参照)。

 

[図表7]都道府県別・高齢者の人口当たりのヒートショック発生率
次ページ温暖な県ほど「ヒートショック発生率」が高い背景

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