写真提供:伊藤朱子アトリエ

日本の住宅は、省エネ基準が不十分なこと等により、他の先進国と比べて「驚くほど寒く」なっていることをご存じでしょうか。ここでは、日本の住まいにおける「ヒートショック」の実態や、「住まいと健康の深い関係」について、住まいるサポート株式会社代表取締役の高橋彰氏が解説していきます。

「健康を保つ最低室温は18度」WHOが発表

たとえばニューヨーク州では、賃貸住宅のオーナーに対して、昼:20℃以上・夜:13℃以上の室温を保つことができる断熱性能を要求しています。また、マサチューセッツ州では、昼:20℃以上・夜:17℃以上、ペンシルバニア州では、昼:18℃以上・夜:15℃以上と定められています。

 

そして、これらの規定は、マサチューセッツ州ではDept. of Public Health、ペンシルバニア州ではDept. of Public Welfareと、日本の厚生労働省のような、人々の健康に関する組織の所管になっています。

 

◇英国では性能不足の家は、断熱改修工事もしくは解体しなければならない

 

英国では、米国の各州よりもさらに踏み込んだ施策を行っています。

 

Energy Act 2011という取り組みの中で、2016年から賃貸住宅のオーナーは居住者から断熱改修工事を求められたら拒否できないことになっています。さらに2018年からは、省エネ等級がEランクに満たない建物は賃貸が禁止されています。

 

英国の省エネ性能は7段階表示です([図表2][図表3]参照)。G・Fランクの性能に当てはまる建物は、断熱改修工事を行うか解体しなければならなくなっています。賃貸住宅は低断熱なのが「当たり前」の日本とは、どんどん取り組みの差が広がっているのです。

 

出典:環境省
[図表2]英国の省エネ性能 出典:環境省

 

[図表3]英国の省エネルギー性能表示の例

 

◇WHOは、住宅全体の室温を18℃以上に保つことを強く推奨している

 

WHO(世界保健機関)は、2018年に「住宅と健康に関するガイドライン」を発表しました。その中で、健康リスク回避のために「暖かい室内環境」を強く勧告しています。

 

健康を保つ最低室温は18度

 

その冒頭では「住宅環境の改善は命を救い、病気を減らし、生活の質を高め、貧困を減らし、気候変動の影響を和らげ、SDGsの達成に貢献する。」という内容が語られています。

 

特に、「室内の寒さと断熱」というトピックでは、居住者を健康に対する悪影響から守るためには、家の室内温度は十分に高くあるべきであるとして、寒い季節に一般の人々の健康を守るために「安全でバランスのとれた室温」として、18℃が提案されています。

 

つまり、住む人の健康を守るためには、寒い時期でも室内温度は18℃以上を維持するべきであると、世界基準として発信されているのです。

 

それに対して、住宅の断熱性能が低い我が国では、リビング等は18℃以上を保てていたとしても、トイレや浴室等を含めた家全体を18℃以上に保てている家は、ごくわずかだと思われます。

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